国内

世田谷区のふるさと納税「鉄道車両修復」はファンに響くか

ふるさと納税による修復が待たれる保存車両

 スペインの教会の柱に約100年前に描かれたキリストのフレスコ画の修復が、元の絵と違いすぎると世界中でニュースになったことがある。古くなっていたものの費用等の問題から手を付けられずにいたところ、寄付代わりに修復を担当すると申し出た80代女性による大胆な描画によって大きなニュースとなってしまった。文化財の修復と保存は、日本でも同じように悩ましい問題だ。日本の近現代史に欠かせない鉄道車両の保存に、ふるさと納税を取り入れた世田谷区の取り組みについて、ライターの小川裕夫氏がリポートする。

 * * *
 2008(平成20)年から開始されたふるさと納税制度は、スタート直後は地味な話題だったこともあって世間の関心は高くなかった。しかし、自治体が和牛や海産物といった豪華な返礼品を用意すると状況は一変。自治体が税収を奪い合うようになり、返礼品も豪華競争の様相を呈する。激化する返礼品合戦に対して、総務省が各自治体に自粛を通知する一幕もあった。

 海産物が獲れるわけでも、高級な和牛を飼育しているわけでもない東京23区の自治体は、ふるさと納税者が目を引くような返礼品を用意できない。そのため、ふるさと納税集めでは苦戦し、ふるさと納税によって多額の税が流出していた。

 ところが、ここにきて東京23区のふるさと納税に対するスタンスにも変化の兆しが表れている。本来、ふるさと納税の趣旨は、故郷や自分にゆかりのある自治体への恩返しとして、居住地とは別の自治体に納税(寄付)する。そのかわりに住民税や所得税などが控除される仕組みになっている。豪華な返礼品で勝負するのではなく、本来の趣旨で納税してもらおう。そんな動きが広まっているのだ。

 東京都世田谷区も豪華な返礼品を用意しない自治体のひとつ。このほど世田谷区は、ふるさと納税のメニューに新しい選択肢を加えた。追加されたメニューは、宮の坂駅前に保存展示している旧玉電車両の修復作業費用と沿線活性化イベントの開催費用の財源に充てるというものだ。世田谷区は、それらの目標金額を660万円に設定している。

 東京都交通局が運行する都電荒川線と並び、東急電鉄の世田谷線は都内に残された貴重な路面電車として知られる。世田谷線は三軒茶屋駅と下高井戸駅とを結ぶ約5.0キロメートルの路線で、一日の乗車人員数は約5万7000人。近年、その数は微増しつつある。

 世田谷線の中間あたりに宮の坂駅があり、隣接して区民センターが立っている。区民センターの広場に、今回のふるさと納税の対象になったデハ80形と呼ばれる車両が展示されている。

関連キーワード

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト