引退を発表したことでモチベーションが落ちるのではないかとの危惧があるかもしれませんが、私としてはむしろその逆。「あと3年」と期限を区切ったことで、これまで以上に、感性を研ぎ澄ませ、馬の才能を引き出したいと思います。「苦手」といわれる短距離(笑い)にもチャレンジしていきたいし、牡馬でダービーも取りたいし、年度代表馬などJRA賞も狙っていきたい。なので、今まで通りの応援をお願いします。この連載も、しばらくは続けさせていただくつもりです。
厩舎スタッフには昨年の秋に解散する予定を伝え、転職の希望も受け付けるようにしました。どこの厩舎に移っても恥ずかしくない仕事ができるはずです。3年の間にフランスに行かせて、ファーブル厩舎流の調教を勉強してもらおうと思います。アンドレ・ファーブル調教師は、過去凱旋門賞を7回も勝ち、数々の名馬を送り出した現代最高の名伯楽です。マニュアルなどではなく、感性を大事にした馬との接し方は、私のお手本としているところでした。
競走馬の余生を応援する「サンクスホースプロジェクト」は少し軌道に乗ってきましたが、引退までの間に確立させたいと思っています。
私自身、引退後は競馬に関わることはないと思いますが、現在北海道の牧場で修業中の次男が、競馬サークルを目指して頑張っています。あれこれいうことはありませんが、応援はしてやるつもりです。
●すみい・かつひこ 1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後16年で中央GI勝利数24は歴代3位、現役では2位。2017年は13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。本シリーズをまとめた『競馬感性の法則』(小学館新書)が好評発売中。
※週刊ポスト2018年1月26日号