◆腸が脳を守る!?
山村氏が研究するのは、自己免疫疾患の一種である「多発性硬化症」とバクテロイデス属細菌の関係だ。
「多発性硬化症は、脳神経を異物として攻撃する免疫反応で生じる難病で、しびれや感覚低下、歩行障害などの症状が出る。食生活の欧米化による腸内環境の変化とともに日本でも症例が爆発的に増えており、過去30年間で患者数は10倍以上に増加した。現在2万人ほどの患者は、10数年後に5万人に達すると想定されます」(山村氏)
山村氏らが最近行なった医師主導治験では、多発性硬化症患者にバクテロイデス属細菌の成分を含む経口薬を投与したところ、全体の8割以上で血液中のTレグ細胞が増加した。
「この結果により、難病である多発性硬化症を腸内細菌やその成分を含む薬剤の投与で根治できる期待が出てきました。腸内のTレグ細胞を増やして症状を改善するメカニズムは免疫細胞の暴走によるあらゆる疾患に適応できるため、多発性硬化症以外の自己免疫疾患やアレルギーの治療においても、バクテロイデス属細菌を含む薬が効果を発揮することが期待できます」(山村氏)
※週刊ポスト2018年1月26日号