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2018.02.02 16:00  週刊ポスト

【著者に訊け】銀色夏生氏 団体ツアーに参加した旅エッセイ

「最近のツアーは一人客も多いのですが、食事時は隣に座るのが不機嫌なおじさんでもお喋りなおばさんでも気を遣い、部屋に戻ると〈ひとりはいいなあ〉と思ったりしました(笑い)。ただし食事が不味いこと自体は問題ではないというか、私はそれを不味いと感じた事実とか現象を書くので、極端な話、面白くなくてもいいんです、私の旅は」

 だからこそ特に興味もない仏像巡りや歴史探訪にも参加。〈龍のお世話をするドラゴンケアーテイカー〉なる先住民族の長老を囲む、主宰者も参加者もスピリチュアル系(!)のツアーでも一切壁を作らない銀色氏は、繊細な事情を抱えた人々の感情を吸いこんでクタクタになりながらも、最後にはこんな境地に至る。

〈どの人にも、他人とは思えない親しみを感じる〉〈嫌いだと思った人にも、好きだと思った人にも〉〈表面的な好き嫌いの感情は人の本質じゃない。本質は心のずっと奥にあって好き嫌いに左右されない〉〈二度と会うことがなくても、ずっとこの気持ちは変わらないだろう〉

◆存在しているというだけで素敵

 そして〈旅は人生の縮図〉〈この小さなツアー世界にも曼荼羅のように人間関係が描かれていた。その絵はそこだけにしか咲き得ない花なのだ〉〈すべてに感謝〉と書く銀色氏は、ツアーはもうこりごりと言いつつ、次なるツアーにまたも足を向けてしまうのである。

「次はキャンセルしようと思いつつ、結局は行ってしまうんです。行っている渦中では楽しくなくても、後から振り返るといい旅に思えてくるのも不思議で、“文句おじさん”にもそうなった理由があるんだろうなと、つい想像してしまって。

 私は昔からそうなんです。例えば普段はクラス内で敵対する同士が、いざクラス対抗の行事になると急に団結するのを見て、そうか、人間は大きな敵が外にできれば内部は味方にもなり、物事は視点一つで変わるんだなって、真理を発見した気分になりました。人間、好き嫌いはあっても良い悪いはないし、全ては状況次第。自分もどう変わるか分からない以上、批判はできないなと、そういう私の物の見方を書いたのがこの旅行記とも言えます」

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