「最近のツアーは一人客も多いのですが、食事時は隣に座るのが不機嫌なおじさんでもお喋りなおばさんでも気を遣い、部屋に戻ると〈ひとりはいいなあ〉と思ったりしました(笑い)。ただし食事が不味いこと自体は問題ではないというか、私はそれを不味いと感じた事実とか現象を書くので、極端な話、面白くなくてもいいんです、私の旅は」

 だからこそ特に興味もない仏像巡りや歴史探訪にも参加。〈龍のお世話をするドラゴンケアーテイカー〉なる先住民族の長老を囲む、主宰者も参加者もスピリチュアル系(!)のツアーでも一切壁を作らない銀色氏は、繊細な事情を抱えた人々の感情を吸いこんでクタクタになりながらも、最後にはこんな境地に至る。

〈どの人にも、他人とは思えない親しみを感じる〉〈嫌いだと思った人にも、好きだと思った人にも〉〈表面的な好き嫌いの感情は人の本質じゃない。本質は心のずっと奥にあって好き嫌いに左右されない〉〈二度と会うことがなくても、ずっとこの気持ちは変わらないだろう〉

◆存在しているというだけで素敵

 そして〈旅は人生の縮図〉〈この小さなツアー世界にも曼荼羅のように人間関係が描かれていた。その絵はそこだけにしか咲き得ない花なのだ〉〈すべてに感謝〉と書く銀色氏は、ツアーはもうこりごりと言いつつ、次なるツアーにまたも足を向けてしまうのである。

「次はキャンセルしようと思いつつ、結局は行ってしまうんです。行っている渦中では楽しくなくても、後から振り返るといい旅に思えてくるのも不思議で、“文句おじさん”にもそうなった理由があるんだろうなと、つい想像してしまって。

 私は昔からそうなんです。例えば普段はクラス内で敵対する同士が、いざクラス対抗の行事になると急に団結するのを見て、そうか、人間は大きな敵が外にできれば内部は味方にもなり、物事は視点一つで変わるんだなって、真理を発見した気分になりました。人間、好き嫌いはあっても良い悪いはないし、全ては状況次第。自分もどう変わるか分からない以上、批判はできないなと、そういう私の物の見方を書いたのがこの旅行記とも言えます」

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン