「君は今、最も危険なドライバーと言われている。私の時代には危険と烙印されるようなドライバーはいなかった」

 すると、セナは冷静にこう答えた。

「あなたの時代には本当に勝ちたいと思ったドライバーがいなかったのだ」

 淡々と元チャンピオンには勝利への執念が欠けていたと断言したセナに、傲慢さやいやらしさはなかった。発言の裏に、次々と記録を塗り替えていた実績と自信があったからだ。

 私はセナという男の実績を高く評価し尊敬する一支持者として、彼の人生観、価値観、哲学を聞いた。前述のホンダへの言及の後、彼はこう続けた。

「ホンダを模範にして自分たち(欧米自動車メーカー)ももっと必死にやらねばと決意を新たにする代わりに、彼らは妬みと批判という簡単な道を選んだ。ごく人間的な反応と言えばそれまでだが愚かなことだ。妬みや批判の代わりに彼らがやらねばならなかったことは、ホンダの努力から学び取ることだった」 

 インタビューから26年が経った今、この言葉は日本への警告として私たちの心に突き刺さる。日本人は、日本企業を追い越していった海外の企業を見下し、批判するだけ。自分たちのほうが優れていると盲信している。かつてホンダに嫉妬した欧米メーカーの姿勢そのままではないか。

※SAPIO2018年1・2月号

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