「有事の後には必ず格差が生じるし、五輪需要で人や金が出ていけばますます歪みや護られない者が出てくるものです。仮に現地で10取材しても使うのが1なら、その1を僕は想像で補います。経費がかからなくて書くのが早く、そこそこウマい、“吉野家”作家を自称しております!(笑い)」

 第一章「善人の死」、第二章「人格者の死」とあるように、被害者の評判は聖人君子そのもの。それだけに手足の自由を奪った相手をアパートの空室等に放置し、餓死させた手口に違和感を覚えた笘篠は、三雲の部下の仕事に同行する機会を得る。

 部下によれば震災後いち早く生活支援に着手した仙台には困窮者が流入し、予算が逼迫。国が生活保護受給者の調整や申請を却下する〈水際作戦〉を指導する中、苫篠は行く先々で〈生活の腐敗臭〉を嗅ぎ、職員の疲弊を目の当たりにする。そして〈当然の業務なのに恨みを買う〉可能性も含めて事件を洗い直し、三雲と城之内が元同僚だった事実を掴む。が、役所側が渋々提出したUSBには改竄の跡が。担当者を質すと消された記録は3件あり、いずれも書類不備や肉親が存命なために申請を却下され、亡くなった老人だった。

 その一人、〈遠島けい〉と近所の少年〈カンちゃん〉、そして利根の失われた日々が、四章「家族の死」以降に綴られていくのである。

◆罪に対する罰が相応かという問題

 かつて殴ったチンピラに逆恨みされ、半殺しにされかけた利根を、けいは救ってくれた恩人だった。無抵抗な彼を殴り続ける相手に水をかけ、〈火事だ〉と騒いで追い払ってくれた気丈な彼女は夫の死後、場末のアパートに一人で住み、カンちゃんの母親の留守中は夕食の面倒も見ていた。

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