ライフ

マーガリンの「トランス脂肪酸」は日本人にとって大問題なのか

食の常識にも変遷がある(写真:アフロ)

 食への意識は世界的に高まっている。健康、ひいては人生へのインパクトを考えれば当然だが、折りに触れて過剰な反応が起きることもまた事実である。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。

 * * *
 今年の6月からアメリカでトランス脂肪酸の食品添加が禁止される。これを受けて明治や雪印メグミルクなど、大手乳業メーカーが続々と「トランス脂肪酸フリー」に舵を切っている。

 トランス脂肪酸はマーガリンの固さの調整に使われる「部分水素添加油脂」に多く含まれる成分で、液体の植物油などを固める加工過程等で生成される。摂取しすぎると心臓疾患などのリスクを高めると言われているが、異論もある。

 乳業メーカーはホームページ上でトランス脂肪酸にまつわるQ&A方式のコンテンツを製作。そこに書かれた文言は”アンチ”に対して懸命の説得をするかのような趣がある。

「自然に生成する反芻動物由来のトランス脂肪酸は、心疾患との関係性が低いと考えられており、『日本人の食事摂取基準(2015年版)」の中にも、「冠動脈疾患のリスクにはならないことが多くの研究で示されている』との記述があります」(明治ホームページより)

 実は国内のマーガリンに含まれるトランス脂肪酸は、年々減少傾向にあった。「(日本よりも基準が厳しいとされる)諸外国でも問題視されないレベル」という声もある。そもそも日本人にとって、トランス脂肪酸は目くじらを立てるほどの大問題なのだろうか。

 ちなみにマーガリンを加工する際、トランス脂肪酸を減らすと、冠動脈疾患や動脈硬化、LDL(悪玉コレステロール)との関連が疑われる飽和脂肪酸が増えるという。実際、国内のマーガリンにおける飽和脂肪酸の含有量は増加傾向にある。

 さらに言うと、バターやラードに含まれる飽和脂肪酸を直ちに悪者扱いすることにも微妙な側面がある。1991年に発表された「ヘルシンキビジネスマン研究」というフィンランドの大規模追跡調査では「動物性脂肪とコレステロールの摂取を減らし、植物油を増やす」(※)という食事指導をしても、10年後のコレステロール値は変わらなかった。それどころか15年後の調査では、指導しなかった群よりも介入群の心臓病の死亡率が2.4倍にもなるという結果が出てしまっている。

【※介入群には、エネルギー、飽和脂肪酸、コレステロール、アルコール、砂糖を控え、代わりに高度不飽和脂肪酸(リノール酸)、魚、鶏肉、仔牛肉、野菜を摂るよう指導し、さらに運動も勧めた】

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン