国際情報

金与正氏 “ほほえみ外交”という名の凄腕文大統領掌握術

五輪後のほほえみ外交の行方は?

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、平昌五輪で完全に主役の座をさらった、北朝鮮の金与正氏に注目。

 * * *
“目は口ほどに物を言う”ということわざが、これほど当てはまる表情もそうないだろう。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働長委員長の妹で特使として平昌五輪にやってきた金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が、南北首脳級会談で文在寅(ムン・ジェイン)大統領に見せた表情は、相手を見下したように冷ややかだった。

 五輪の開会式では主役をかっさらったとまで言われ、これまで金正恩委員長の色しかなかった北朝鮮のイメージを、その“ほほえみ”でガラリと変えてみせた与正氏。だが何よりうまかったのは、彼女の人心掌握術ではなかっただろうか。

 開会式のスタンドで、後の段にいた与正氏に振り向いて手を指し出した文大統領。開催国の大統領として挨拶したと言えばそれまでだが、後の段とはいえ、与正氏の席は文大統領の一段上。与正氏が見下ろす形での握手となったが、彼女が文大統領に頭を下げることはなかった。

その後も挨拶したり、握手する機会があった二人だが、映像を見る限り、与正氏が頭を下げる姿は一度も見られなかった。

 韓国側に譲歩したような印象を残さないよう警戒した、というメディアもあるが、「自分はこれまで訪韓してきた北朝鮮の人間とは、立場が違うのだ」と示していたとも言えるだろう。彼女は訪韓時、視線を上に向けてまっすぐに前を見つめ、常に顎を上げていたからだ。顎を突き出すように上げる仕草は、権力や優越感、攻撃性を表していると言われる。

 南北首脳級会談では文大統領に手を指し出され、その手を軽く握り、一瞬、笑顔を見せた。ところが席に着くなり、与正氏の表情は一変し、顎が上がる。金委員長からの親書を手に、見下すような視線で目付きも鋭く冷やか、表情も冷淡。座り方も上半身を背もたれにあずけ、テーブルから身体が離れている。両手はテーブルの下だ。実に落ち着き払って冷静なのだ。

 ところが文大統領の仕草は、与正氏とは正反対。いく分、上気したような顔をほころばせて椅子に座ると、前のめりに身を乗り出した。テーブルに両手を上げると、一瞬、その手をこすりあわせ、揉んだようにも見えるではないか。

 文大統領の高揚感はハンパないということが、この仕草からわかるだろう。手をこすりあわせたり、揉んだりするのは待ち遠しさや期待感があるからだ。テンションMAXの彼には、与正氏がどんな表情や態度を見せようと目にも入らず、気にもならなかったのではないだろうか。いやもしかすると、潜在的に自分よりも金ファミリーのほうが格上と見ていた可能性もあるかも?とさえ思ってしまうほど、文大統領は彼女の態度を気にしていないのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
「とにかく献金しなければと…」「ここに安倍首相が来ているかも」山上徹也被告の母親の証言に見られた“統一教会の色濃い影響”、本人は「時折、眉間にシワを寄せて…」【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン