甘いマスクと高いファッションセンスで、あの三浦知良選手と1、2を争うほど女性人気が高かった武田氏。所属当初から女性が主役のコンテストの審査員をしたり、ファッション誌からオファーがあったりと活動は華やかで、スポーツコメンテーターとしてよりタレントとして人気者になっていった。
クイズやバラエティーで“おバカタレント”としてブレイクしてからは、ヒナ壇タレントとしてなくてはならない存在となるも、実は近年、監督になるために自腹で勉強を重ねていた武田氏。同時に協会から“おバカ”としてのテレビ出演を禁止されてからというもの、めっきりテレビ出演は減っている。
引退してもアスリートはアスリート。サービス精神が過ぎて、バラエティー番組での“ぶっちゃけ発言”が目立ってしまうと、自身が専門とする種目の大会があったとしても、「説得力がない」との理由で解説者として呼ばれなくなってしまうのだ。
視聴者の皆さんにとっては一つのテレビ局だったとしても、スポーツ局と、バラエティー班を有する制作局とでは、アスリートに対する考え方が全く違う。スポーツ局では、アスリートにはいつまで経ってもアスリートとしてのリスペクトがあり、失礼な対応がないよう、細心の注意を払っている。一方、制作局ではやはりキャラクターやトーク力を重視してしまうのである。
『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)のようなスポーツバラエティーはまだいいが、それ以外のバラエティーでは、恋愛ネタを始め、「実は潔癖症」「アイドルのファン」など、自身のプライベートをいかにさらしてもらうかが鍵になる。
女性アスリートなら、ルックスの良さも大事なポイントであり、“美形&ぶっちゃけキャラ”ということで、フィギュアスケートの安藤美姫や浅田舞は、バラエティー番組だけでなくイベントでも名前が挙がるタレントに成長した。
そして、この二人に続く存在なのが、なでしこJAPANのメンバーだった丸山桂里奈だ。彼女も所属はホリプロ。いまのところ、初期の武田修宏氏を踏襲しているように見えるが、この先、彼女がさらにタレント寄りで活動するのか、それとも、先輩・武田氏のように、いつかは指導者へとシフトチェンジを図るのか。興味深く見守っているところだ。
平昌五輪の解説者を見渡すと、フィギュアスケートの織田信成氏と村上佳菜子氏は、ひじょうにバランスがとれていた。両氏は、その平和的なキャラクターからバラエティー番組からも引っ張りだこだが、解説者としても存在感を表していた。村上氏に至っては、一局に絞らず、各局の情報番組にバランス良く出演する、特例中の特例だった。
芸能プロダクションも、こうしたアスリートの志向や、バランスを誤ったときの世間の反応などには熟慮を重ねており、「慎重にならざるを得ない」と幹部は口を揃える。
果たして、今回の平昌五輪のメダリストたちには水面下でどんな交渉が行われているのか? 結果がわかるのは、しばらく先のようだ。
撮影/雑誌協会代表取材