女性セブンの名物還暦ライター“オバ記者”こと野原広子が、世の中の気になったことについて、気ままに語る。今回は、60才にして原動機付自転車免許の試験に挑んだ件だ。
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「原チャリの免許を取ろうと思うんだけど…」と言ったら、18才で普通免許を取った都会人のM子(パート・65才)は「高校生が取るものでしょ? 年齢制限ないの?」と大笑い。
「あんな試験、試験会場に行く電車の中で問題集を読めば取れるよ」と、軽いことをいうのは田舎の人ね。とんでもないって。『1200問 実践問題集』を開き、60の手習いを始めてみたら、まず言葉の意味がつかめないんだもの。
「徐行」「転回」はわかるけど、「空走距離」だの「制動距離」って何よ? 交通標識の「幅員減少」と「車線数減少」の違いなんて、初めて知った。てか、年のせいか、この「初めて」が絶望的に覚えられない。
腹をくくったのは、受験前日のこと。ひたすら問題を声に出して読み、間違えたところに付箋を貼って、再び声に出した。こんなことしたのはわが生涯、初めてだよ。
18才で上京してから、「車の運転ができたらいいな」と思ったことは何度かあるけど、普通免許を取るには、時間もお金もかかる。決断がつかないまま、42年。それが先日、茨城在住でわが家のドライバーだった父が亡くなり、母親(89才)がひとり実家に残ったことから、事情が変わったの。
東京のアパートから実家までは、つくばエクスプレスとバスを2つ乗り継いで、3時間弱かければたどり着ける。けど、問題はその後よ。どこへ行くにも、車がないと身動き取れない田舎では、私は居るだけで家族の“足手まとい”なんだよ。
聞けば、母が数年前まで使っていた原チャリがまだ動くというし、ここで一念発起するしかないって、要は、切羽つまったわけ。それともうひとつ。カンレキの声をきいてからめっきり、「やったつもり」の勘違いが多い自分に、「喝!」を入れたいとも思ったの。
ほとんど寝られずに試験当日を迎え、朝8時半に鮫洲運転免許試験場へ。そこで視力検査をしたら、いよいよ30分の学科試験だ。で、終わるとすぐに試験会場で発表で、「合格者はこの部屋に残り、そうでない人は出て行ってください」と係の人。