文在寅大統領が差し出した手は何をもたらすか(写真右が金与正氏) YONHAP NEWS/AFLO
五輪期間中、「心を合わせて難関を突破しよう」「南北関係を当事者同士で解決すべきだ」と訴えた文大統領は、五輪を機に北朝鮮との対話を進めるつもりだろう。金委員長の右腕である与正氏が親書を手渡した席で南北交流の具体的な方策を話し合ったにちがいない。
これから先、何が起こるのだろうか。米・トランプ大統領は南北対話のあいだは、軍事行動をしないと約束している。北朝鮮は、米国が軍事行動を選びにくい状況を創出するため、南北のスポーツ・文化交流計画を韓国に提案するだろう。
開催を延期している米韓軍事演習が試金石となる。北朝鮮は、「軍事演習をしたら南北対話は進まない」と文大統領に揺さぶりをかける。そのとき、朝鮮半島問題の主人公は韓国と北朝鮮だと考える文在寅政権は、米韓軍事演習の規模縮小を米国に訴えるにちがいない。
ここで日本が一連の動きに反対すると逆効果になる。平昌五輪開幕式前日の日韓首脳会談で米韓軍事演習を実施すべきと述べた安倍首相に対して文大統領は「内政の問題だ」と不快感を示した。日本が南北交流を警戒し、米韓同盟強化を助言すれば、北朝鮮ブームが起きていない韓国社会だが、日本への反発から親北に傾斜してしまう。
北朝鮮は今年9月9日の建国70周年を「民族の慶事」の大イベントであると宣伝しており、この時期までに首脳会談を実現したいはずだ。金大中と金正日の両氏が初めて南北首脳会談を開いた2000年6月の記念日に合わせて、今年6月開催を目指している。
文大統領は米朝対話再開が必要だと答えた。首脳会談が実現すれば、南北の関係改善は加速する。すでに文大統領は北朝鮮に800万ドルの人道支援を行うと決めている。現在停止中の南北経済交流事業が再開され、開城工業団地の操業や金剛山観光再開を検討している。朝鮮半島縦断鉄道からシベリア鉄道に乗り入れる列車ダイヤの運行を具体化する話も浮上することだろう。すべて北朝鮮の外貨獲得源である。