芸能

舞踊家・田中泯 人間って、はっきり言って野蛮です

舞踊家の田中泯

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優としても活躍する舞踊家の田中泯が、『メゾン・ド・ヒミコ』の台本を読んで気づき、仕事を選択する基準が変わったことについて語った言葉をお届けする。

 * * *
 舞踊家・田中泯は二〇〇二年に映画『たそがれ清兵衛』に出演して以降、役者としても活躍するようになる。二〇〇五年の『メゾン・ド・ヒミコ』ではゲイの老人役を演じた。

「『たそがれ清兵衛』に出演してから、似たような仕事の依頼が結構来たんです。でも、全て断りました。そんな時に『メゾン・ド・ヒミコ』の台本を送っていただき、読んだら面白かった。

 その時に気づいたことがあります。それは、人間にはちょっとした違いで『もしかしたら、ああなっていたかもしれない』という『もう一つの可能性としての自分』もいるのではないかということです。

 たとえば江戸川乱歩が『私は生まれた時から、私という群れの中の一人でしかない』と言っているように、あるいは寺山修司が『寺山修司という職業を私は生きている』と言っているように、私もまた『他にたくさんいるかもしれない私』の中の一人を今やっているだけではないか。そして、この台本を読んだ時に、『私はこの人を知っている。自分自身の可能性の一つではないか』と思えたんです。

 それから仕事を選択する基準が変わりました。『別のタイミングで生まれていたら、こんな人になっていたかもしれない』『この人に生まれてきてたらどうだったろう』と芝居を通じて考える楽しみが出てきたんです。

 そして、『この人は踊りの中に現れるかもしれない』と思うようになることで、凄く脱皮することができました」

 二〇〇七年のNHKドラマ『ハゲタカ』での職人役、二〇一〇年の大河ドラマ『龍馬伝』の土佐藩執政・吉田東洋役。いずれも大友啓史演出の作品でインパクトの強い芝居を見せた。

関連記事

トピックス

自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン
暑くなる前に行くバイクでツーリングは爽快なのだが(写真提供/イメージマート)
《猛暑の影響》旧車會が「ナイツー」するように 住民から出る不満「夜、寝てるとブンブン聞こえてくる」「エンジンかけっぱなしで眠れない」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日のなかベビーカーを押す海外生活》眞子さん、苦渋の決断の背景に“寂しい思いをしている”小室圭さん母・佳代さんの親心
NEWSポストセブン
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵被告(62)
《信者の前で性交を見せつけ…》“自称・創造主”占い師の濱田淑恵被告(63)が男性信者2人に入水自殺を教唆、共謀した信者の裁判で明かされた「異様すぎる事件の経緯」
NEWSポストセブン
米インフルエンサー兼ラッパーのリル・テイ(Xより)
金髪ベビーフェイスの米インフルエンサー(18)が“一糸まとわぬ姿”公開で3時間で約1億5000万円の収益〈9時から5時まで働く女性は敗北者〉〈リルは金持ち、お前は泣き虫〉
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン