たしかに羽生はインタビューで、驚くほど細かい「自己分析」をしてみせる。一方で、他のアスリートのことを聞かれると、「その選手の性格による」(2月27日会見)などとアッサリしたものだ。
羽生が高度に発達した孤独脳を持つにいたったのにも、特殊な事情がある。脳科学者の塩田久嗣さんが言う。
「高校1年生の時の東日本大震災の経験が大きいと思います。それまで使っていた仙台のリンクが被災して使えなくなり、練習の場を転々とすることになりました。見ず知らずの土地では孤独ですが、それがさらに目的意識や集中力を高めることを知り、自然と孤独を“味方”にする脳の構造になったのでしょう。練習の場を得るために奔走して頭を下げる母親の姿も、“孤独に負けていられない”という彼の使命感につながったのだと思います」
たくさんの友人がいるわけではない。それでも、羽生には強く結びつく家族や「信じるもの」の存在もある。
「肌身離さずつけているペンダントは、地元仙台で接骨院を開業する整体師にもらったものです。幼い頃から体のメンテナンスだけでなく、精神的にも頼り切っている整体師は、今回の平昌五輪にも帯同しました。羽生が孤独を苦にしないのは、いつも身近に感じる『特別な力』があるからかもしれません」(スポーツ紙フィギュア担当記者)
孤高の絶対王者から「孤独脳」を学びたい。
撮影/雑誌協会代表取材
※女性セブン2018年3月22日号