国内

フードロス減らない背景に日本の食品業界「3分の1ルール」

まだ食べられるのに廃棄される食品は年間621万t

 3m四方の鉄製容器に、パン、おにぎり、野菜、果物とあらゆる食材がなだれ込んでいく。グィーンという機械音が鳴り響き、奥底へとのみ込まれ、粉砕される食材の数々。小さく砕かれたそれらは金属探知機を通過し、作業員の手作業でビニールや貝殻などの異物を除去。鋭利な機械でより微細に破砕され、最後はドロドロに液状化する──。

 神奈川県相模原市にある日本フードエコロジーセンター。ここには、毎日35tもの食品廃棄物が運ばれてくる。東京と神奈川の大手食品工場、スーパー、百貨店などから出る売れ残りの廃棄食品が主である。

 同センター代表取締役の高橋巧一氏が言う。

「コンビニのおにぎりや弁当が多く、廃棄物は米が大きなウエイトを占めます。傷ついたじゃがいもや形の悪いトマトなどの野菜も、店頭に並ぶ前に廃棄されてこちらに届けられます」

 液状化した廃棄物は、殺菌処理と乳酸発酵を施して、豚用の飼料になるという。

「日本で発生する食品廃棄物の8割はリサイクルされることなく、自治体の焼却炉で燃やされる。そこに投与される税金は年間2兆円。ほとんどの国民は、まだ食べられる食品が税金で処理されていることを知りません」(高橋氏)

 これが日本の食料廃棄をめぐる現実である。農水省の発表(2017年)によれば、日本国内で「まだ食べられる」にもかかわらず捨てられている食品は、年間およそ621万t。

 1300万人の東京都民が1年間に食べる量に匹敵し、日本人1人当たりに換算すると毎日茶碗1杯分の食品を捨てている計算になる。世界規模で見ても、発展途上国に援助される食料(年間320万t)の2倍近い数字である。

 廃棄された621万tのうち、メーカー、スーパー、レストランといった食品関連事業者から出るものが339万t。残りの282万tは各家庭から出ている。

 こうした食料廃棄は「フードロス(食品ロス)」と呼ばれ、世界的な問題となっている。日本でも関心が高まっており、2月2日には都内でフードロス対策を考える国際セミナーが開かれたばかり。

『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)の著者で、この問題に詳しい井出留美さんが語る。

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン