国内

30代のシングルマザーが「借金ありの虐待男」と縁を切るまで

母と子だけでも十分暮らせたのに

 もうすぐ新年度が始まる。新しい学校、新しいクラス、新しい友達に期待を膨らませている子供も多いだろう。一方で、子供への虐待のニュースが止む日がないほど続いている。虐待のパターンにはいくつかあるが、そのうちの一つに、母親のパートナーに子供が虐待されるケースがある。なぜ、母は虐待するパートナーの元をなかなか去ろうとしないのか。過去のつらい出来事を振り返る母親の体験を聞いて、ライターの森鷹久氏が、虐待から脱出する術を考えた。

 * * *
「悪いのは私。この子が中学生、高校生と大きくなって、あの時の事を思い出すかもしれない。私はその時、どうやって接すればいいのか……。謝っても謝りきれません」

 涙ながらに語るのは、埼玉県内に住むシングルマザーのミホさん(仮名・三十代)。二十代前半で、当時二十代後半の男性と「できちゃった結婚」をしたが、旦那はほとんど働かず家事もせず、子供が生まれてくる前にはミホさんの元を去った。しばらくは実家で母親と三人で暮らしていたが、子供の保育園入園をきっかけに実家を出て、さいたま市内のアパートで子供と二人暮らしを始めた。

 昼間は派遣社員として事務作業をこなし、夕方子供を迎えに行く。食事や風呂などを済ませて実家の母親の元に預けた後は、大宮のキャバクラ店で22時から午前3時まで働く。昼夜合わせての収入は月に40万円を超える事もあり、日々の生活に対する不安はなかったが、仕事と子育てに忙殺され、自分の時間が一切ない、という現実に嫌気がさしていた時、キャバクラ店に客としてきていた男性と関係を持ってしまった。

 男性は当時三つ年下のA。不動産会社勤めの日焼けした、いかにも遊び慣れた雰囲気。話もうまく、数回デートした時には金払いも良かった。「子供が好き」「バツイチでも関係ない」といった甘言にも、ミホさんは頼もしさすら感じ取っていた。

「子供を愛していたのは本当です。ただ、仕事と子育てだけで、私は何のために生きているのだろうと思う事はありました。Aと男女の仲になり、やっと自分が”女”だと思えました」

 ミホさんの周囲では、結婚する友人もいたものの、ほとんどが独身。仕事上でも責任感のある立場で活躍し、恋愛も遊びもとプライベートを謳歌する友人たちの姿を羨ましく、そして妬ましくも感じていたミホさんにとって、Aとの出会いは待望のものだった。父親の顔をろくに知らず育った自身の経験も踏まえ、我が子には父親がいないことで寂しい思いをさせずに済むと思うと、安堵感も大きかったのだ。それから間もなく、結婚を前提にミホさん親子はAと同居を開始したが、すぐにAの本当の姿を知った。

「Aには数百万円の借金があり”月収30万”と言っていたのも嘘で、すぐに私が援助する形になりました。働きにいっているようでしたが、サボりぐせがひどく、給与がまともに支払われていませんでした。そのくせ、ギャンブル好きで女好き。キャバクラや風俗にもこっそり通っていたんです。それでも、子供には優しかったし、父親としていてほしい。当時はそう思っていました」

 傍から見れば「破滅まで一直線」とも思えるミホさんの判断は、すでに「男性依存」に陥っていたことを伺わせる。冷静に考えれば、いくらシングルで寂しく大変とはいえど、収入的には何の問題もなく、ミホさんと我が子、そしてミホさんの母親と手を取り合って幸せに生活していけたはずだが、Aの出現で何もかも変わった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン