コーチと選手としての結びつきをますます強めたリオ五輪が終わってしばらくして、田南部氏は警視庁レスリング部のコーチスタッフから外された。告発状などではこの異動を圧力だと主張しているが、この配置転換を前出の関係者は「やむを得ない」とみている。
「彼は警視庁のコーチなので、警視庁の選手を強くして成績をおさめるのが仕事です。でも、警視庁のレスリング選手は北京、ロンドン、そしてリオデジャネイロと連続で五輪出場をのがしました。成績が低迷したら、コーチングスタッフをテコ入れするのは普通にあることなので、そのための異動なんだろうなと思っていました。この件に関して栄さんの差し金だと思っている人は、ほとんどいないと思います」
二人の行動に問題があったのも事実だが、指導を止めろという高圧的な働きかけもあったため、田南部氏と伊調は自分たちのやり方は正しいと思い込んでしまったかもしれない。そのため、自分たちにとって不利益と思えるすべての事情をパワハラに結びつける勝手な理屈を主張しているように、レスリング関係者からは見えている。告発を#metooとしてのムーブメントにするためには、被害者どうしが連帯するのが最善だと思われるが、そのような日はやってくるのだろうか。