そんな中、アパレルブランドで断トツのウェブ通販売上高を誇っているのはユニクロで、すでに487億円ものネット売上高があり、これはアパレルブランド中で他を寄せ付けない首位である。
「あれ? ゾゾタウンの売上高の方が大きいんじゃないの?」と思った方もおられるだろうが、ゾゾタウンの売上高自体は700億円くらいしかない。なぜならゾゾタウンは、ファッションビルと同じで出店ブランドから出店料や手数料をもらっており、それが売上高となる。
全ブランドの売上高合計は「取扱高」と表記され、それが2000億円あるが、4000ブランド集まって2000億円だから1ブランドあたりの平均売上高がどれほど低いかわかるだろう。平均すると1ブランドあたり5000万円しかなく、単独ブランドとして比べた場合は487億円のユニクロの足元にも及ばない。
よく「試着もできないネットで服が売れるとは思わなかった」と言われるが、半分正しく残り半分は間違っている。
ユニクロが自社通販サイトのみ(ゾゾにもAmazonにも楽天にも出店していない)で、これほどの売上高を稼げる理由は、全国800店舗強ある店舗網で、多くの人が目当ての商品を一度は触ったり試着したりしているからといえる。だから店舗に行く時間がないときは、ネットで購入しやすい。
ゾゾタウンが4000もブランドを集めているのに取扱高が2000億円しかないのは、出店ブランドの多くがユニクロほどの店舗数を持たず、それこそ「試着なし」で購入しなくてはならないからだといえる。試着なしというハードルは業界人やメディア人が想像するより高いと個人的には考えている。
以上、見てきたようにネット通販は有望な市場ではあるが、超有名ブランドでない限りは“無策”のままで出店しても何ら成果は期待できない。
これまでアパレル各社はあまり深く考えずに「何となく」出店したり広告を出稿したりで成果を上げることができた。しかし、ネット通販はそんなわけにはいかない。そこを理解していればネット通販で売上高を稼げるだろうし、理解していなければまるで売れない。ネット通販こそアパレル各社の「考える力」が試される市場といえるだろう。