ビジネス

湾岸エリアのタワーマンション 五輪待たずに早く売るべき論

五輪選手村になる晴海エリア(写真:時事通信フォト/朝日航洋)

 韓国で行なわれていた平昌冬季五輪も閉幕し、いよいよ2年後は東京五輪。選手たちの熱戦はもちろん、日本経済にとって「五輪特需」の期待も高まるが、気掛かりなのは“祭りの後”だ。すでに江東区や中央区の湾岸エリアでは競技会場や選手村の建設に加え、高層マンションも次々と建ち並び価格も高騰しているが、果たして五輪後も好況は続くのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が予測する。

 * * *
 少し気の早い話だが、東京五輪が終わってからの湾岸エリアにおけるマンション市場はどうなるのかについて考えてみたい。

 まず周知の通り、東京五輪における各競技の開催会場は東京の江東区湾岸エリアに集中している。競技施設の一部はその後もレガシーとして利用されるが、多くは閉幕後に撤去される。中央区の晴海エリアに設置される選手村は、その後住宅として分譲されたり賃貸に出されたりすることが決まっている。

 現在、江東区の湾岸エリアにはタワーマンションが林立している。現在建設中、あるいは今後建設予定のものもある。十数年前から、江東区の湾岸エリアはタワーマンションの建設ラッシュが続いていると言っていい。

 そして、東京五輪の開催が決定した2013年の秋以降、湾岸エリアのタワーマンションは価格が上昇したにもかかわらず、販売はかなり好調だった。五輪開催決定前と後では、市場の様相が一変したと言っていい。

 例えば、当時江東区の湾岸エリアで販売活動が佳境に入っていたのは「ブリリア有明シティタワー」と「スカイズ タワー&ガーデン」というタワーマンションがある。ブリリア33階建ての全600戸だが、スカイズは44階建てで全1110戸の大規模物件。竣工は翌年の8月に予定されていた。

 五輪開催地の決定前は人影まばらだったこの両物件の販売センターへは、決定翌日から見学客が殺到したという。そして次々に購入契約が結ばれ、両物件とも数か月後には完売してしまった。

 また、同時期に選手村の建設が予定されていた中央区の晴海エリアでは、「ザ・パークハウス晴海タワーズクロノレジデンス」という49階建て883戸の物件が販売されていた。建物は開催決定直後の2013年11月だった。完成在庫になっても販売が長引くと予想されていたが、五輪開催決定で販売センターはにわかに活気づいた。その結果、2014年の早い段階で完売にこぎつけている。

 これら五輪の勢いで新築時の販売がスムーズに進んだ物件は今、どうなっているのか?

 例えば、前述のスカイズ タワー&ガーデン。この物件は地下鉄の有楽町線「豊洲」駅から12分も歩く立地。そこをプールなどの豪華施設で補った、典型的な湾岸タワーマンション。建物が完成後も中古物件として多くの住戸が売り出された。すでに築3年と少し。市場では「値上がり物件」としての位置づけにある。

 ただし、高値で売り抜けることができた新築購入者は、さほど多くないと推定できる。その様子は、レインズ(国交省管轄の指定流通機構)のデータを見ていると分かる。

 この原稿を書いている時点(2018年3月中旬)でレインズをみると、売り出し物件の登録が32件。成約を調べてみると直近の1年で18件。1か月に1.5件という割合だ。となると、今出ている32件がすべて売れるまでには2年近くかかる。その時には、また新たな売出し物件が出ていることだろう。

 売り出し中の32物件の平均坪単価は約364万円。直近の1年に成約した住戸の平均坪単価は約309万円。これを見ると、「高く売り抜けたいけれど、なかなかできない」という実態が見えてくる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン