安倍首相にとって“見せしめ”の一番手は財務省だ。同省の権力の“源”となっている国税庁を分離し、社会保険料を集める日本年金機構(旧社会保険庁)を統合して歳入庁を設置する。強力な税務調査権を握る徴税部門を失えば、同省は政治家に抵抗できなくなる。
第二の消えた年金問題(※注)や、労働時間調査のデータ改竄で政権の足を引っ張る厚労省は「社会保障省」「国民生活省」「子ども・子育て省」などに分割、“独立王国”といわれた外務省は経産省の通商・貿易部門と統合し、総務省からは電波・放送行政を分離して経産省に吸収させ、放送メディアとネットメディアに対する官邸の睨みを強化する──という構想が練られている。
【※注/今年2月に支給される年金で、約130万人が「過少支給」となっていた問題。記入項目が大幅に増えた申告書の手続きミス、委託業者のデータ入力ミスが重なった。3月20日になって日本年金機構が会見で明らかにした】
元財務官僚の小黒一正・法政大学教授が指摘する。
「国民目線に立てば、本来、行政改革は不断に取り組むべき課題ですが、官僚不祥事をきっかけとして、政権がマイナスイメージを払拭するためにやるのは本末転倒になる。そもそも今回の官僚不祥事の背景には、官僚の人事権を握った官邸が、首相の指示に従った者を出世させ、そうでない者は飛ばすなど、恣意的な人事を行なっている印象を与えてしまったことが遠因になっている。透明性を欠いたまま、役所に対するペナルティで省庁再編を掲げても大義がない」
※週刊ポスト2018年4月27日号