国内外で活躍する音楽ユニットsatellite Young主宰の草野絵美さんは、慶應義塾大学在学中の21才で妊娠。半年間休学して出産し、無事に復学・卒業した。その決断に一切の後悔はないという。

「出産に葛藤はなかったですね。昔から人生計画の中で、ぼんやりと若いうちに産んだ方がいいのかなと思っていたので“時期が少し早まっただけだね”という感じでした。大学では多様性に寛容な校風もあいまって、出産前ギリギリまで授業を受けていても、奇異な目で見られることはなかったです。むしろ、お腹触っていいですかとか、妊娠おめでとう!とか、知らない学生さんからお祝いされたりしました(笑い)。

 私は子供を産んだことで、“好きなことをやれていない”という感覚がまったくないんです。音楽活動を始めたのも、海外でライブしてミュージックビデオを作ったのも出産後。むしろ子供を持つという共通点で新しい出会いがあったり人生が広がっていっている感じです。

 両親はまだ若くて体力があるので、息子の面倒をよく見てもらっています。早く産んだメリットですね」

 だが、誰もが彼女たちのように、“いつでも”“後悔なく”妊娠を受け入れられるわけではない。思い通りの妊娠が世の中にあって、今、卵子凍結を行う女性が急増しているという。不妊治療の権威として知られる、オーク住吉産婦人科(大阪市)の医師・船曳美也子さんは言う。

「卵子凍結をしに来られるかたは年間100~150人いらっしゃいます。ただ、凍結だけでも10個で50万円(5年間)、受精卵を作るのに25万円とお金がかかります。39、40才あたりで“子供が欲しいんです”と駆け込み来院するかたが多いのですが、体外受精の妊娠成功率は、30才で20%、40才で7.7%とグッと下がる。高齢出産のリスク、肉体的な出産適齢期はどうしても抗えません。生物学的にいえば、学生時代に妊娠出産というのは選択肢としては“アリ”だと思います」

◆子供は“社会の宝”として扱う

 女性がいつでも妊娠しやすい社会をつくるにはどうしたらいいのか。前出の三浦さんはこう語気を強める。

「妊娠した人に優しく、他人の子供をいつくしんでくれる社会にならないと。子供は私的なものではなく、“社会の宝”として扱うことが必要だと思います。また政府が家庭で育児をしたいという人にも、不規則な仕事に合わせられるような多様なサービスを提供できる無認可保育園に入った人にも、割引券をあげるとか、“学業があるから”を認可保育園の応募資格に加えるとか、生き方や働き方に合わせた柔軟な受け皿をつくるべきじゃないでしょうか」

※女性セブン2018年5月3日号

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