詠美:ないんです。私が先生とお呼びしていた宇野千代先生の教えで、筆が乗ったら筆を置きなさい、そうしないと滑ってしまうと。夜書いた手紙みたいになってしまう恐れがあるので。あ、興が乗ってきたな、あたし結構いいじゃん、天才、みたいに思い始めたら絶対に止めるようにしています。
◆〆切に追われるのは嫌
大倉:初めてエッセイを読ませていただいたんですが、丁寧に丁寧に書かれるんですね。ちょっとイメージが違っていました。ただ、その中に次々と毒が盛り込まれていてですね。
詠美:もう全方位射撃ですね。
大倉:毒を吐きまくるので、そこがやっぱり面白いなあと思って。
杏:週刊誌で連載をされていたものがまとまっているので、いろんな時事ネタとかゴシップとか、「あ、記憶に新しい!」みたいなものがいっぱいあるので、熱いうちに味わいたい、みたいなものですよね。週刊連載ってあっと言う間に次、次、次って来ちゃいますよね。書き溜めとかはなく…。
詠美:やっぱり週刊誌だとアップトゥーデートになるべくした方がいいので、だけど〆切に追われるのは嫌なので、ちゃんと日にちを決めて、この日はこれを書こうって決めてやっています。
杏:私、結構ギリギリとか、〆切当日だったりするので、見習いたい(笑い)。
◆「マル禁子供」本こそ子供に
番組の冒頭では、12才の女の子からの「オススメのエッセイ集を教えてください」というメッセージを紹介していた。再びその話に戻り──。
杏:オビに「マル禁子供」って書いてあるんですよね。
大倉:12才のかたからメールをいただいて、今日は山田詠美さんのエッセイだよーっていうことだったんですが、「大人の愉しみマル禁子供」ですからね。ただこれ、子供オッケーですよ。
詠美:マル禁子供というものの方が子供は愉しいと思うんですよね。私自身も、これは子供の頃に読んじゃダメだよって言われていたものとか、図書館に置けないよ、みたいなものが絶対読みたいと思いましたから。
杏:このエッセイを読むと、もうちょっとテレビとか注意して見てみようかなとか、見方が変わりますよね。
大倉:これね、すんごく面白いですから。ぜひ『吉祥寺デイズ』を読んでいただければ嬉しいなあ。
※女性セブン2018年5月10・17日号