芸能

『リアルカイジGP』 司会の加藤浩次は適役なのだが

人生ギャンブルが似合う加藤浩次(イラスト/ヨシムラヒロム)

 漫画家・福本伸行氏による『カイジ』シリーズといえば、主人公の伊藤開司が友人の保証人となり多額の負債を抱えたことをきっかけに、借金返済のため文字通り命を賭けた極限の勝負を繰り返す人気漫画だ。今では「カイジ」という単語が、命がけで一攫千金で人生をバラ色に好転させる、といった意味を連想させるほどだ。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、AbemaTVで4月に始まった賞金1億円『リアルカイジGP』のスケールの大きさについて考えた。

 * * *
 昨年末、TBSで人気漫画『カイジ』を原作とした異色のバラエティ特別番組『人生逆転バトル カイジ』が放送された。出場者が原作漫画を再現したギャンブルに挑戦し、話題を集めた。

 番組演出は『水曜日のダウンタウン』で著名な藤井健太郎。原作と藤井の底意地が悪い演出方法の相性は抜群。『カイジ』独特の効果音「ざわ……」や独特の台詞回しも完璧に再現されていた。原作ファンも楽しめる番組に仕上がっていた。

 今年1月、ネットニュースを見ていると驚くべきニュースが飛び込んできた。なんと! AbemaTVでも『カイジ』を原作とした番組を制作するとのこと。その名も『リアルカイジGP』。

 TBS版『人生逆転バトル カイジ』の熱が冷めないなか、随分と強気な試みである。読み進めると更なる驚きが。賞金は業界過去最高金額の1億円。TBS版は200万円である、それに比べて50倍。強気な心持ちも理解できる賞金設定だ。この過剰さがTV新興勢力のAbemaTVらしくて良い。

 4月の配信を指折り待つなか、事前番組もチェック。そのなかで、『リアルカイジGP』の司会者が極楽とんぼの加藤浩次だと知る。個人的には、これ以上はないナイスな人選だと思った。

 番組のコンセプトは「1億円を手に入れて人生を大逆転」。

 小樽出身の加藤、東京での1人暮らしは風呂なしアパートから始まった。それが今となっては高級住宅街の豪邸暮らし。策略とパワーゲームで支配される芸能界を勝ち抜き、全てを手に入れた勝者の生活を営む(実際に加藤は、芸能界自体がギャンブルみたいなものと考え、そこで運を使うのはもったいないからとパチンコをやめている)。大金を掴んだ方法はギャンブルとは異なるが、大金を手に入れて人生を大逆転したことには変わりはない。

 ここで簡単な『リアルカイジGP』の説明をしたい。応募総数約3万5000人のなかから、勝ち残った1人が1億円を手に入れる。競技はROUND1からROUND3、そして決勝の4回戦で争われる。

 4月15日に放送された初回では、台場で行われたROUND1の東京予選の模様が配信された。書類選考を勝ち上がった2000人が参加し、そのうち250人が勝ち抜けるシビアなシステム。絶対に負けられない戦いがそこにはあった。

 番組冒頭、加藤が壇上に現れる。「お前達、1億円が欲しいか!?」と眼下に見る挑戦者に問う。

 今となっては『SASUKE』でしか、目にすることない巨大なセットに囲われる2000人の挑戦者は一斉に「オー!」と叫ぶ。続けて、加藤は「人生逆転したいか!?」と煽る。挑戦は再び「オー!」と叫ぶ。しかし、コール&レスポンスなんか違う。この違和感なんだろう……、そして気づく「これはカイジのノリじゃないな」と。

 原作『カイジ』は、主人公カイジが戦うギャンブルの元締めグループの人外的なエグさがベース。冷酷無慈悲で阿鼻叫喚の勝負が行われる。そんな殺伐すぎる世界観に映えるのが作者・福本伸行のユーモラスな台詞回し。殺伐とギャグが同居する、そのギャップが『カイジ』の魅力だ。TBS版はそれを完璧に再現していた。

 しかし、Abema版はこの様相。まるで往年の『アメリカ横断ウルトラクイズ』。福留功男が叫ぶ「ニューヨークへ行きたいか~!!」を見ているような気分になった。見ているこっちがこはずかしくなる。1億円争奪バトルだけで十分番組が成立するのに、なぜ『カイジ』要素を加えたのか。そんなことを考えてしまう展開はまだ続く。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン