ちなみに、イオンのライバルであるセブン&アイ・ホールディングスでも今夏にはグループ横断のスマホアプリをリリースし、来春にはセブン銀行が主導する形の決済アプリと紐付ける計画だ。2019年春以降、決済シーンでもセブンvsイオンの対決は新たなステージに入る(イオンのWAONとセブンの電子マネーnanacoも同じ2007年にサービスを開始している)。
また、岡崎氏はスピーチの冒頭、「おかげさまでイオングループの営業収益(=売上高と同義)は2018年2月期、8兆3900億円と過去最高を更新し、日本の小売業でナンバーワンです」と語っていたが、この売り上げスケールを武器に、タッチ決済導入では他の大手小売業より導入コストも有利にはなるだろう。
岡崎氏は、タッチ決済導入による効率化についても、次のように言及していた。
「我々にとって現金の準備が減ります。これまでは、釣り銭用として、レジには相当な額のお金を充当してきましたから。大きなお店でレジの数が多いところならなおさらです」
タッチ決済の導入により、あらかじめレジに置いておく硬貨や紙幣の現金が少なくて済むようになるというわけだが、一方でイオンでは去る4月2日から、キャッシュレス化とは逆行する、あるいはレジの現金を減らすこととは真逆のサービスもスタートさせている。
キャッシュアウトと呼ばれる、欧米では日常風景になっているサービスで、要はレジでデビットカードを渡し、5000円とか1万円の現金をレジで出してもらい、その出金した金額分を、デビットカードの残高から即時に引き落とすというもの。再び岡崎氏の弁。
「キャッシュアウトの需要はあるんですよ。このサービスを始めてからまだ日が浅いですが、ご利用データを見ると、そんなにびっくりするほどキャッシュアウトのご利用は多くはありませんが、確実に需要はある。無理やりキャッシュレス一辺倒に、という時代ではまだないと思います。
逆に、現金でお支払いする方々を我々のほうから敬遠してしまうと(売り上げにも)すごく影響が出てしまうので、強制的に全部、キャッシュレスの時代だから、全部そっちでやっていきますよというのはちょっと強引かと。
いまだ、銀行に振り込まれた給与から生活費分を引き出して封筒に入れ、そこから一万円札や千円札の1枚1枚を大事に使って生活していかれる方もいらっしゃいますから。もちろん、我々の努力でキャッシュレスのほうに誘導していくことでウチも効率的な店舗運営ができますので、早くそちらのほうに行けばいいなとは思いますし、キャッシュレス化の後押しはどんどんしていこうと考えています」