「外出先から自宅に戻ると、室内が異様に“ヤニ臭い”んです。もしや、と嫌な予感がして寝室に進むと、案の定、テーブルの上の空き缶に多数のタバコの吸殻が入っていました。窓も開けずに何本も吸ったらしく、天井にはまだうっすらと煙が残っていました」(西谷氏)
Airbnbで貸し手(ホスト)が定める「ハウスルール」には「禁煙」とはっきり中国語で明記していたため、西谷氏は客観的な証拠を残そうと吸殻の写真を撮り、急いで窓を開けて換気した。ちょうどその時、2人のゲストが外出から帰宅した。西谷氏が「タバコ吸った?」と聞くと、「あ、はい吸いました」と平然と答えた。ハウスルールに違反している旨を伝えたところ、しっかり読んでいなかったという中国人男性たちは「すみませんでした」と素直に詫びたという。
さらに部屋を汚した場合には最大2万円の清掃費用を徴収する旨を「予約ページに書いていた」と伝えると、2人はうなだれたそうだ。
「後日、Airbnbを通じて清掃料金1万円をダメ元で請求したところ、先方はあっけなく支払いに応じてくれました。Airbnbを使いこなして海外旅行に行けるような富裕層で、しかも20代という年齢であれば、旧来の“ゴネる中国人”というイメージは当てはまらないのかもしれません。また、Airbnbが仲介に入り、ゲストも評価されるので、自分の信用を傷つけたくないという思いが働いたのでしょう」(西谷氏)
民泊を利用するような中国人は考え方が洗練されており、マナーの悪さはそれほど目立たないのかもしれない。とはいえ、中国人に限らず外国人は日本人に比べて定められた規約を大雑把にしか読まないケースが少なくないという。宿泊需要の増加が見込まれる2020年の東京五輪開催に向けて、「民泊」の事業者はこうしたトラブルへの覚悟と対応が必要になるかもしれない。
【プロフィール】にしたに・ただす/1981年、神奈川県生まれ。フリーライター。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞の記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。中国での潜入アルバイトについてまとめた『ルポ 中国「潜入バイト」日記』を3月29日に発売した。