「デブ専キャバに比べたら、まだマシかなっていう感じです。でもここがダメになったら“お母さんヘルス”とか“おばあさんソープ”で働くのかなって……。体力的にどんどんきつくなってきて、でも収入は減る。未来が見えない。何をやっても悪い方向へ向かっているような気がする」
千葉県下で複数の熟女系性風俗店を経営する稲本一郎氏(仮名・40代)によれば、舞さんのような例は「ドツボにはまってしまった人」の典型であり、今後も同様の状況に追い込まれてしまう人が少なくないと説明する。
「水商売や性風俗店で働けば高収入が得られますが、それは一時のもの。でも、気が付いた時には抜けられず、飲み屋からヘルスに、ヘルスからソープにと“ステップ”していく例が珍しくない。かつては、中高年だと需要がなかったが、熟女ブームで新たなジャンルができた。女性は性風俗店で長く働ける代わりに、最後の最後まで搾り取られる、という構図が出来上がっています」
水商売や風俗店など、夜職と呼ばれるジャンルでいったん働くと、なかなか昼職へ転職しづらいとよく言われる。勤務形態の違いに戸惑い、気をつけて周囲に合わせようとするのだが、それでも服装やものごしが浮き上がってしまい、気づけば職場で孤立させられることも少なくない。そして、もう戻らないと決めていたはずの夜の仕事へ、復帰するというループを繰り返す人もいる。当然だが、年齢が高くなると、以前のような好条件では復帰できないのが普通だ。
夫の蒸発により、子育てとの兼ね合いから短時間で収入を得なければならなくなった舞さんも、最初に始めた水商売で食えなくなり、デブ専キャバ、性風俗とたらいまわしにされた挙句、給与は以前の三分の一ほどになってしまったが、このような例は今では珍しくない。不倫を標榜したデリヘル店に勤務する傍ら、夜は熟女キャバクラで働き、空いた時間に「現役OL在籍」を謳うソープランドで働くといった、訳の分からない状態に陥ってしまっている女性も増えているのだという。
「使えるものは最後まで使い倒さないと、ということです。女性が女の子とは呼びづらい年齢になっても、おばさんやおばあさんでも、いつまでも性を売りにすることができるようになりました。それを不幸かどうかと感じるのは人次第じゃないですか? 他にシゴトがないんなら、こういうことで食っていくしかないわけだし……。不景気な世の中でもありますから、ドツボにはまる女性は確実に増えますよ」(稲本氏)
舞さんは自身が置かれた状況を「未来が見えない」と表現したが、そこへ行きつくまでには幾度も「その予兆」を感じてきた。不景気により旦那の収入が減ったこと、離婚、キャバクラ店に勤めだしたタイミング。しかし、生活のためにはやむを得なかった。そうして迫りくる「地獄」を知りながらも、どんどん自ら近寄って行ってしまった。
「これ以上の不幸が想像できないから、今はまだ耐えられる気がしています。ただ、将来が見えにくい。五十になって、今更何か新しい仕事ができるとも思えず、絶望しかありません」
力なく話す舞さん。転落が、舞さんから生きる自信まで奪っていったようにも見えた。