◆敵対関係からの脱却を宣言

 米朝両国は2000年10月12日に発表した共同コミュニケで、朝鮮戦争以来50年にわたる「敵対関係」からの脱却を宣言したことで、朝鮮半島の冷戦構造の解体は加速した。さらに同年12月23日には平壌で金正日総書記とオルブライト米国務長官の会談が行われ、米朝の蜜月ぶりが演出された。

 米朝会談は1992年から開始されたわけだが、その間、米国は経済制裁を緩和し、米国、日本、韓国はコメなどの食糧支援を含む経済支援を行った。また、北朝鮮が保有する核兵器の製造にも転用可能な黒鉛減速炉と核兵器開発を放棄させるため、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を設立し、軽水炉による原子力発電所の建設に着手した。

 原発が完成するまでの間の補償として、KEDOは日本と韓国の負担で重油の供給を開始した(原発建設は2003年に中断、2005年にKEDO解散)。日本は経済支援だけでなく、金丸訪朝団(1990年)、渡辺訪朝団(1995年)、森訪朝団(1997年)、村山訪朝団(1999年)を平壌に送っていた。また、1992年11月を最後に中断されていた日朝国交正常化交渉を2000年4月に再開。2002年9月には小泉純一郎首相が訪朝した。

◆意図的に壊される融和ムード

 当時の状況は昨年(2017年)のトランプ大統領就任後から現在までの米朝関係と似ている。前述したように、クリントン政権では北朝鮮への武力行使まで検討したにもかかわらず、米朝関係は北朝鮮の思惑通りに融和へと進んだ。

 しかし、2002年12月12日に北朝鮮は凍結した核施設の再稼働を宣言。さらに、翌2003年1月10日に核拡散防止条約(NPT)の脱退を宣言し、「米朝枠組み合意」を崩壊させ、融和ムードを一変させた。

「米朝枠組み合意」の崩壊により、2003年以降は6か国協議に交渉の舞台が移されたが、米国と北朝鮮との二国間での会談は、北朝鮮の融和姿勢によってはじまり、北朝鮮の核開発再開宣言によって終了した。つまり、融和ムードは北朝鮮によって作り出され、北朝鮮によって壊されたのだ。

 今年3月5日、南北首脳会談の開催が合意されて以降の、北朝鮮によって演出された異様な融和ムードも、数年後には北朝鮮の手によって壊されることになるだろう。

関連記事

トピックス

高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン