国際情報

北朝鮮の非核化による融和ムード 数年後に自ら壊す可能性も

北朝鮮・豊渓里の核実験場(時事通信フォト)

 4月27日、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長が「板門店宣言」に合意した。この宣言には次のような内容が含まれている。(1)南と北は年内に朝鮮戦争の終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換する。(2)南と北は、完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現する。

 6月12日に開かれる予定の米朝首脳会談では、これらの内容が取り上げられる見通しだが、果たして「終戦」と「非核化」は本当に実現できるのだろうか? 朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏がレポートする。

 * * *
 朝鮮戦争は1953年7月27日に休戦協定が調印された。協定第12節では「全ての部隊による朝鮮における全戦闘行為の完全な停止」と記されているが、朝鮮半島を南北に隔てる非武装地帯(幅4km、全長248km)とその周辺では、意図的な休戦協定違反と「戦闘」が続けられてきた。

 韓国国防部(国防省)が隔年で発刊している「国防白書」(2016年版)によると、朝鮮戦争休戦以降の北朝鮮軍による、国連軍および韓国軍に対する非武装地帯とその周辺の海域・空域における挑発行動(武力行使を含む)は1117回。韓国への武装工作員の侵入は1977回にのぼる。

 古い統計になるが、1954年から1999年までの北朝鮮側の休戦協定違反は43万822回。北朝鮮が主張する韓国側の休戦協定違反は83万5838回。銃撃戦など武力行使による死亡者は米軍80人、韓国軍405人以上、北朝鮮軍857人以上となっている。

 北朝鮮への融和政策(太陽政策)を推進し、金正日総書記との南北首脳会談を実現した金大中、廬武鉉政権当時も、北朝鮮による休戦協定違反は少数だが発生していた。膨大な回数の休戦協定違反の内訳は些細なものが大半だが、「終戦」を宣言する前に、せめて休戦協定違反はゼロにする必要があろう。

 休戦協定は調印から65年になるが、程度の違いはあるにせよ韓国側も北朝鮮側も休戦協定に違反していた。このような状態で「終戦」を宣言して平和協定を締結しても、協定が守られるのか疑問がある。

 文在寅大統領が考える「終戦」が、具体的にどのような状態を指しているのか不明だが、まずは南北分断の象徴であるとともに、朝鮮戦争が「終戦」していないことを意味する非武装地帯の解消を推し進めなければならない。非武装地帯を維持したままでの「終戦」はあり得ないからだ。

 また、南北が「友好国」になるのであれば、北朝鮮軍が600基保有している短距離弾道ミサイルの削減だけでなく、様々な信頼醸成措置が必要となる。

 これらの措置を履行するためには高官レベルの協議を何度も開く必要がある。実務レベルとなると、さらに多くの協議が必要となるだろう。協議の進展具合によって、北朝鮮に対する経済支援が繰り返されることになるのだが、こうした会談の危うさは、次に述べるように過去の米朝会談にも現れている。

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン