それでも新馬戦は京都の1800メートル。そこを勝って、梅花賞2400メートルを使った(3着)。それからもう一度、同じ距離のゆきやなぎ賞を走らせてみた(1着)。少頭数ということもあってリズムよく走れ、やはり最後方からの競馬でした。いい脚を長く使えるイメージが得られ、東京2000メートルのフローラSに向かったわけです。

 ただし、あくまでも拙速を嫌う気持ちに変わりはなく、フローラSでもしダメならば、秋に向かう心積もりでした。鞍上の指示をしっかり聞ける落ち着きがあり、長距離向きなんですね。この時期、2400メートルを2度経験している牝馬は珍しく、その点でもオークスは楽しみです。

 今年2月にデビューしたばかりのランドネは、2戦目の未勝利戦を勝った勢いで桜花賞当日の忘れな草賞に挑戦しましたが掛かってしまって8着。ところがスイートピーSではパドックから落ち着いており、レースでも2番手で折り合いがついて抜け出すことができました。胴長の体形で跳びが大きく、距離が延びても問題なさそうです。

 さて、楽しみで賑やかなのはいいのですが、3頭出しの難しさもある。

 厩舎内での競争といったことはないものの、GIレースなので取材が多くなり、対応の忙しさは3倍になる。「どっちの馬に力を入れますか?」などと聞いてくる記者もいる(答える調教師はいません!)。なにを言うにしても、受け取るほうは比較してしまうことでしょう。とりわけコメントには気を遣います。

 前号の当欄ではタラレバばかりの調教師レース展望コメントを揶揄しましたが(笑い)、今度ばかりは「道中、落ち着いて走れれば」くらいしか、言いようがなさそうです。

●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後17年で中央GI勝利数24は歴代3位、現役では2位(2018年5月6日終了時点)。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。『競馬感性の法則』(小学館新書)が好評発売中。2021年2月で引退することを発表している。

※週刊ポスト2018年5月25日号

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