「着替えは、まずたんすまで行き、どこに何が入っているかを思い出し、必要な服を取り出し、体に装着する。私たちはこの工程のどこが障害されて着替えられないのかを見つけます。もし服の場所がわからないだけなら、引き出しの1つ1つに、中の服の種類を絵に描いて貼っておくだけで解決することも。
また長年、家族の食事を作ってきた主婦が調理に手間取るようになったケースは、調理道具や食器の配置が原因でした。できるだけ作業の流れが途切れないよう物の場所を変えたことで、体に染みついた調理する記憶は維持され、料理をする日常が戻りました。
生活のすべてが作業の積み重ね。でも少しできなくなると家族は心配して、多くの活動を制限し、代わりにやってあげようとしたりしますが、高齢者本人の方は自信を喪失し、残った能力もどんどん失ってしまいます。
認知症の人をよく観察し、できない部分だけをさり気なく支え、本人は“いつものようにできている”気持ちを持ち続けられる。できるだけ失敗体験を減らすことで認知症の進行抑制にもつながります」(村島さん)
受診や介護を頑なに拒否する人への対応についても聞いてみた。
「今の高齢者は、認知症が何もわからなくなる病気といった思い込みが多いよう。また自分が困っている瞬間を忘れ、困っていないから受診の必要がないと、本当に思っていることもあります。
一方的に否定したり、説得したりしないよう、そんなご本人の気持ちに寄り添い、辛抱強くお話をします。場合によっては、娘さんや息子さんのお友達として、日常的なお話から入ることも。ご家族もそんな視点を持つことで、家族内のコミュニケーションがスムーズになると思いますよ」(村島さん)
※女性セブン2018年5月31日号