国内

英を参考にした「認知症初期集中支援」の中身はどんなものか?

世田谷区の高齢福祉部介護予防・地域支援課課長の高橋裕子さん

 認知症の症状の出方や進行具合は個人差が大きく、本人はもちろん、家族も不安が尽きない。認知症の兆候のある親が受診や介護サービスを拒絶し、家族が困惑しているという話もよく聞こえてくる。

 そんな状況も支援するのが『認知症初期集中支援』だ。認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続けられる社会の実現のために掲げられた『新オレンジプラン』の施策の1つで、認知症が疑われる人に複数の専門家で構成される支援チームが訪問し、約半年間集中して自立生活のための支援を行う。平成24年度に始まり、今年度には全国すべての市区町村で実施される予定だ。

 初年度からモデル事業としてスタートした全国14か所の1つ、東京都世田谷区の高齢福祉部 介護予防・地域支援課課長の高橋裕子さんと、世田谷区に設置されたチームの一員として実際の支援にあたっている、作業療法士の村島久美子さんに詳しく聞いた。

◆悪化してからでは医療も介護も生かされにくい

「これまでの介護現場の経験則としても、できるだけ早い段階から支援した方が、その後の経過がとてもよいということがわかっています」と言うのは高橋さん。

 認知症への不安からか、状態が深刻になり、自宅、地域で暮らすことが破たんし始めてから慌てて病院へ行くというケースが多いのだという。

「認知症は、認知機能が低下することで生活機能が徐々に障害されていきます。一般的に認知症が進むと新しいことへの適応が難しくなるため、たとえば訪問介護やデイサービスなど、本人を支援するためのサービスでも、認知症が悪化してからでは適応できないことが多いのです。もっと早い段階、本人の能力が残っているうちに、支援や人に出会って慣れておけば、その後に進行したときに、次の策への切り替えもしやすくなるわけです」(高橋さん)

 また高齢者にとって心配なのは認知症だけではない。

「何かいつもと様子が違う、まさか認知症?などと、不確かな不安で手をこまねいていたら、糖尿病やうつなど別の病気が原因だったということもよくあります。認知症は脳が障害される病気なので、進行すると全身機能に影響してきます。つまり内科的な管理が必要になるので、医療サポートも重要。介護、医療ともに、認知症のできるだけ早い段階から介入することで、結果、本人も家族も安心し、負担も楽になるのです」(高橋さん)

◆しくみの見本は英国の『メモリーサービス』

 国が『認知症初期集中支援』の施策にあたり、モデルにしたのがイギリスのメモリーサービスというしくみだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン