時価総額ベースで統合するとなると、日産が4.66兆円でルノーが3.48兆円(ともに2018年3月30日時点)で日産が優位だが、日産がルノー株を15%保有しているのに対してルノーは日産株を43.4%保有しているため、日産と三菱はルノーの完全子会社になる。
しかも、フランス政府が保有しているルノー株15%は、株式を2年以上保有する株主に2倍の議決権を与える「フロランジュ法」によって30%に達し、経営の重要な意思決定に介入できるようになる。一方、日産のルノー保有株には議決権がない。つまり、事実上、日産と三菱がフランス政府の影響下に置かれてしまうわけだ。
しかし、そもそも時価総額で日産とルノーが拮抗しているという現状に疑問を持つべきだろう。
両社の業績を比較すると、2017年の世界販売台数は日産が582万台(速報)で、ルノーの376万台の1.5倍である。売上高も日産が11.8兆円、ルノーは7.8兆円で、やはり1.5倍だ。営業利益も日産6850億円、ルノー5087億円で日産がルノーを上回っている。
ところが、ルノー・日産グループの純利益に占める各社の寄与度を見てみると、2013年以降、ルノーだけが急速にアップしている。なぜか?
私の分析では、ゴーン氏はフランスやブラジルのルノー工場で日産車を作らせたり、主要部品の共通化を進めたりしているので、日産・ルノー連合の中で「仕切り価格」を調整し、ルノーの利益が出るように持っていっている可能性が高い。つまり、日産がルノーに利益を搾り取られているのではないかと疑うべきなのだ。