フランス政府が企図している経営統合を阻止するためには、日産が投資銀行などを使ってルノー株を30~40%まで買い増してフランス政府の思惑通りに運ばせないようにすべきだと思う。そういう手を打たないと、日産と三菱が日本企業ではなくフランス企業になってしまいかねないのだ。野心的なマクロン大統領は、自動車メーカーの世界上位を日・米・中が独占する中に割って入り、フランスの旗を立てたいのだろう。

 そして、そうなった暁には、ゴーン氏はその功績を認められて、フランスの経済・産業・デジタル大臣に転じる可能性すらあると思う。彼はまだ64歳だ。大臣を経験すれば、その次は日産・ルノー連合よりも大きなグローバル企業に天下ることもできるだろう。

 そもそも今の日産にとって、ルノーと提携しているメリットはほとんどない。提携を解消したらヨーロッパでの生産基地が足りなくなるが、その分はサンダーランド工場で増産すればよいし、ヨーロッパ大陸で生産余力のある他の工場に頼むという方法もある。また、アメリカや中国では日産がルノーを圧倒しているし、ブラジルなどは日産が自前で工場を造ればよい。つまり、いつ提携を解消してもかまわないのである。

 日産・ルノー連合の行方は、日本とフランスの政治的・外交的な問題も含んでいる。今のところ日本政府は何も対策を講じていないように見えるが、みすみす日産と三菱をフランスに売り渡すようなことは、絶対に避けるべきである。

※週刊ポスト2018年6月1日号

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