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2018.06.01 07:00  週刊ポスト

【著者に訊け】人気脚本家・木皿泉氏 『さざなみのよる』

◆働くことは相手がいてこそ光を放つ

 夫妻自身、夫の脳出血や妻の鬱病など、幾多の困難を乗り越えてきただけに、日常を肯定し、笑いに変える態度には説得力がある。

妻鹿「病気の時より若い頃の方が大変だった。長く生きるだけ損だって、本気で思っていたんですよ。トムちゃんは違うけどね」

和泉「そんなん、考えてもムダやから、考えへん」

妻鹿「それでもぐちぐち言いながらもみんな生きてゆくわけで、日常って一体何だと、いつも考えていた。やっぱり一番の転機はトムちゃんと会ったことかな。以前は誰かのためにご飯を作るなんて苦痛にしか思えなかったけど、そうかプロセスなんだと。相手がいて、働くことこそが光を放つと、気づけたんです」

 例えば第7話。妹の死後、看護師づてに一通の手紙を鷹子は受け取り、それを託した〈佐山〉なる男に37年前、ナスミが誘拐されかけた事実を知る。病院で偶然再会した彼に、ナスミは〈なんで私を殺さなかったんですか〉と声をかける。かつて借金苦から犯行に加担した彼は、ナスミが口にしたある童謡が自分を思い留まらせてくれたと手紙の中で告白する。

〈お茶をのみにきてください/はい、こんにちは/いろいろお世話になりました/はい、さようなら〉

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