互いをトムちゃん、ときちゃんと呼び合う木皿夫妻。実際の作業の流れは、まず設定等々を二人で決め、妻ときちゃんが一通り脚本化。それを膨大な読書量を誇る元漫才作家のトムちゃんがブラッシュアップし、どちらがどこを書いたかわからない作品ができ上がる寸法だ。

 第1話では死の床にいるナスミ本人、第2話以降はナスミの姉〈鷹子〉や妹〈月美〉、ナスミの夫〈日出男〉らが話者を順に務める。日出男と後にできちゃった結婚する〈愛子〉とナスミとの意外な関係や、東京時代の元同僚〈加藤由香里〉が託されたある伝言など、故人の知られざる横顔が語られてゆく。

 改めて気づかされるのは、口もガラも悪いナスミが、ここぞという時に頼りになる人物だったこと。愛子にしろ由香里にしろ、彼女の一言に背中を押されるのだが、その言葉自体、ナスミが誰かから手渡されたものだった。

妻鹿「つまりそこも連環で、ナスミ一人の手柄じゃないんですよね。日本人は死者を妙に美化するけど、むしろその方が人をバカにしているし、ダメなところはダメなまま、悼めばいいと思うんです。

 いいところも悪いところも、まるごと受けとめることで、亡くなった人が本当に生きていたんだという実感が持てるんじゃないかなと思う。限られた命を生きたっていう。そういう生きている実感を持ちにくい今の時代、万人受けする価値観なんてないから、『生きてよし』ということだけでも伝わるよう、いろんな価値観のフックを地道にバラ撒いていくしかないかなと思う」

和泉「忍者の撒き菱やな」

妻鹿「それを誰かが不意に踏んでくれて、『イテテ』と気付くみたいなね(笑い)」

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