ライフ

【著者に訊け】人気脚本家・木皿泉氏 『さざなみのよる』

人気脚本家ユニット、木皿泉氏

【著者に訊け】木皿泉氏/『さざなみのよる』/河出書房新社/1400円+税

 一昨年と昨年のお正月。和泉務氏と妻鹿年季子氏による人気脚本家ユニット、木皿泉・作の『富士ファミリー』(NHK)が放送された。富士山麓のコンビニとは名ばかりの雑貨屋を舞台に、同家の三姉妹(薬師丸ひろ子、小泉今日子、ミムラ)や片桐はいり演じる〈笑子ばあさん〉らの日常を描くドラマだ。帯に〈小国ナスミ、享年43〉とある本書『さざなみのよる』は、ドラマ作品では冒頭で既に亡くなり、幽霊となっている次女ナスミの死から始まる。

妻鹿「小説の方は家族から一人の時間に戻る、夜のイメージがあったんです」

和泉「よるは寄るとも読めるしな。寄せては返す波のように、昼と夜、生と死が、全部連環していくんです」

 東京で結婚後、癌に冒され、笑子が作るおはぎが名物の実家に夫と戻ったナスミは、その間、様々な印象や言葉を周囲に残していた。そうした一見脈絡のない欠片の集積が彼女の実体を刻み、ナスミというヒト型をした空白や不在という名の存在が、ここには確実に「ある」。

妻鹿「あれ、なぜドラマではナスミを幽霊にしたんだっけ?」

和泉「ぼくらが考えるナスミ役の小泉さんは、遠くで見守ってるくらいの出方が一番好きなんやと思う。笑子ばあさんだけに見えるナスミの幽霊は、ここにはいないけど、どこかにはおるんや」

妻鹿「今回の小説は、独立した作品として読めますし、ナスミの死にこんな背景があったなんて、書くまで私たちも全然知らなかったんですよ(笑い)。片桐はいりさんは、ドラマの方を、おせちみたいだと言っていた。その各90分の重箱に詰め切れなかったタッパの中の御馳走を、物語の行間を一つ一つ埋めるようにして書いたのが、この小説でした」

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン