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映画『終わった人』主演・舘ひろし&原作・内館牧子が対談

撮影が始まると即座に内舘さんに腕を差し出す舘(撮影/矢口和也)

 定年で“終わった人”の烙印を押され、夢なし、趣味なし、仕事なし。そして、わが家に居場所なし──そんな、ないない尽くしの人生へ突入した60代男性の悲哀と、シニア世代の夫婦の日常がユーモラスに描かれた映画『終わった人』(6月9日全国ロードショー)。主演の舘ひろし(68才)と原作者である内館牧子さん(69才)による対談をお送りする。

 銀行員として、すんでのところで出世街道を外れた壮介は、寂しくサラリーマン最後の日を迎える。「定年って生前葬だな…」──そう落ち込む彼は、しばらく不本意な日々を過ごす。そんな中で、新興IT会社の顧問にと誘われ、妻に反対されながらも、男としての再起を夢見るのだが…。

内館牧子(以下、内館):それにしても、舘さん(グイッと身を乗り出して)、よく『終わった人』なんてタイトルの作品に出演してくださいましたね。

舘ひろし(以下、舘):ぼく自身が終わりそうな年ですからね(笑い)。とはいえ、さすがにこのネガティブなタイトルを聞いた時には、「そろそろおれも終わりかな」と思って、その場でお断りしようかと…。

内館:そうでしょうねぇ。

舘:でも小説を読んでみたら面白くて映画の脚本は非常にコメディータッチになっていて、あぁこれはうまくいくな、って。

〈日中のリビングでこっそり男性週刊誌のエッチな袋とじを開くなど、原作にはない演出も笑いを誘う〉

内館:あれ、上手だったわよ。

舘:あそこは中田(秀夫)監督の趣味ですから。私の日常の姿ではありません! 壮介は会社へ行かなくなったら、やることがなくて暇なんで、昼間からソファでゴロゴロ寝転んで、いやらしい写真でも見ようかと袋とじを開けるんですよね。このシーンだけで、5回くらい撮り直しました。壮介は失敗して怒りだすんですけど、そんなに怒るものなのかなぁ。ぼくならきっと寂しい気持ちになりますね(しんみり)。

内館:原作は深刻な場面が多いけれど、コメディーとして描かれたことで哀愁が出て面白くなった。

舘:“悲劇は喜劇”なんですよね。

内館:袋とじを開けるとか、「人と会うから昼食はいらない」と見栄を張った壮介が、妻の留守中に家でコンビニ弁当を食べて、ゴミをコンビニへ捨てに行ったら「家庭ゴミはダメです!」と言われちゃうとかね。ゴミも捨てられない夫なの(笑い)。そういう原作にはない描写で「あぁ、この壮介って人は、本当に大変なんだな」と苦労がわかって、すごくいいコメディーになっている。

舘:壮介のモデルはいるんですか。

内館:いないんですよ。でも、原作の小説が出た時、出版社に「おれがモデルだろう」という声がすごくたくさん届いたんですって。沖縄や北海道の全然知らない人からも届くから驚いちゃって。

舘:リアルですから、みんな自分がモデルだと感じたんでしょうね。

内館:私自身も60代半ばの終わった年になると、一生懸命仕事をしてきて生きてきた人たちがある年齢になって、社会がだんだん狭まってきた時に、どういう感情になるのか予測がつくのね。

※女性セブン2018年6月14日号

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