「1977年、王貞治さんがホームランの世界記録を樹立すると、“栄誉ある賞を与えるべき”という世論が沸き起こりました。しかし、王さんは叙勲には若すぎる。そこで、当時の福田赳夫首相が国民栄誉賞を新たに創設しました」(前出・スポーツ部記者)

 そうした経緯もあり、授与のプロセスはまず首相が授与の「検討の指示」をするところからスタート。次に内閣府が功績の確認を行い、最後の段階で行われるのが「有識者からの意見の聴取」だ。

「候補者が賞にふさわしいかどうかを各界の有識者に尋ねます。有識者は人数も名前も非公開です。候補者の業界に詳しい識者や学識経験者、経済団体幹部など、十数名だといわれています。

 羽生選手の場合、正式決定まで異例の時間がかかったのには、この有識者の中に“授与には慎重であるべきだ”という意見が少なからずあったからとしか考えられません。3か月もかかったわけですから、意見が紛糾して“受賞見送り”の可能性もあったのでしょう」(永田町関係者)

◆イチローは「未熟者だから」

 実際、羽生の受賞には「検討の指示」の段階で反対の声が少なくなかった。スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏はこう話す。

「国民栄誉賞は『到達点』として引退後や没後に授与されるならまだしも、20代前半の羽生くんのように若い選手にとっては、今後の長い選手生活でプレッシャーになりかねません。そもそも、国民栄誉賞はその成り立ちからして、時の首相の“人気取り”の手段であって、大した権威があるわけではない。政府はもっと選手の今後の人生も考慮してほしい」

 過去に国民栄誉賞を辞退したスポーツ選手が2人いる。1人はイチロー選手(44才)。「現役の間はもらう立場にない」「未熟者だから」と2度のオファーを固持した。

 もう1人は阪急(現・オリックス)で活躍し、通算盗塁数の世界記録を更新した「世界の盗塁王」福本豊さん(70才)だ。本人が辞退した理由をこう説明する。

「辞退したのは国民の見本になれる自信がなかったからです。ぼくはパチンコはするし、麻雀もするし、たばこも吸うし。自分には相応しくない賞だと思いました。それぐらい、重く、大きな賞で、広く国民に愛され敬われるような人物でないといけないという、ぼくなりの解釈があった」

 若くしてそうした賞をもらうことは名誉なことである一方、羽生にとっても競技生活のみならず、プライベートでも重荷になるという意見だ。

「羽生選手の人気が、政治的に利用されている」と指摘するのは、ジャーナリストの大谷昭宏氏だ。

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