国際情報

天安門事件 実態は趙紫陽失脚を狙ったトウ小平の陰謀との説

近代史の謎が明らかに?

 民主化を求める学生や市民らを戦車や軍靴で踏みにじった1989年6月の天安門事件から29年が経つが、新説が登場した。事件後失脚した趙紫陽・中国共産党総書記の秘書だった鮑トウ氏(86)は「ニューヨーク・タイムズ」紙上での対談で、「天安門事件は当時の最高実力者、トウ小平が共産党政権を存続させるために行った武力鎮圧といわれるが、実態は趙紫陽氏の失脚を狙ったトウ小平の陰謀であり、クーデターだった」との新たな見解を明らかにしたのである。

 この理由として、鮑氏は学生らの民主化要求運動は政治改革を最後まで主張していた胡耀邦・元総書記の死去をきっかけに発生したことが前提と解説。その胡氏の主張を退けて、総書記辞任に追い込んだのはトウ氏だったというのだ。トウ氏にとって胡氏の名誉回復を実現しようとした趙氏は許せない存在で、「トウ氏死去後、趙氏がトウ氏を批判することを恐れて、学生運動を利用したのだ」と鮑氏は指摘している。

 事件の発端となった胡氏の死去は1989年4月15日。この一報を聞いた北京市内の大学生らは「胡耀邦追悼」を掲げて、翌日には北京市内をデモし、市内中心部の天安門広場の人民英雄記念日などを占拠する騒ぎとなった。

 鮑氏によると、事態を重く見た党指導部は18日、党中央政治局常務委員会を開催し、胡氏の葬儀について、「全国各政府機関と海外大使館で半旗を掲げ、10万人規模の告別式を行う。告別式の司会者は楊尚昆国家主席で、趙紫陽総書記は弔辞を読み上げる。トウ小平氏も告別式に出席する。弔辞で胡耀邦を高く評価する文言を盛り込む」などと細かく決定された。

 さらに、会議では20日に『胡耀邦同志の死去について』との声明文を発表することで一致した。この声明文を通じて、学生らの怒りの沈静化を図る狙いがあったという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン