一方、マサカリ投法で通算215勝を挙げた元ロッテのエース・村田兆治氏は、「そもそも先発完投を目指す投手が減った。これじゃあ20勝は出ない」という。昭和51年に21勝を達成し、同54年には「21完投」の成績も残した村田氏の言葉には説得力がある。
「昔は先発完投が常識で、マウンドに上がる日はいつも完全試合を目指していた。時代が違うといわれるかもしれませんが、今の投手は7回を投げれば中継ぎがいると思っている。だから、5回までももたない。僕は沢村賞の選考委員ですが、選考基準項目の『200イニング』を超す投手はほぼいません。
そんななか、巨人・菅野は先発完投の意識が強い。2年連続でリーグ最多完投を続け、去年は沢村賞も獲った。この気概で20勝を目指してもらいたいね」
時代とともに球界のシステムは変わった。それでも“20勝投手の条件”は、実はそれほど変わっていないとする見方だ。通算567本塁打を放ち“不惑の大砲”と呼ばれた門田博光氏も、数々の名投手と対戦した経験から同様の見方をする。
「どの時代でも、“自分の勝ち”にこだわる気持ちがなければ、勝ち星は積み重ねられないですよ。昔のピッチャーは、他の投手を信用していなかった。点差が開いても完投が当たり前、点差が小さければ危なくて他人には任せられない、とね。それで、1度でも20勝を経験すると、さらに自信を持って投げるようになって、大した球威もないのにコントロールだけで打ち取られてしまう……そんな“エース級”が何人もいましたわ」
※週刊ポスト2018年6月22日号