一方、ノンアルビールで2位のサントリーは、アサヒより先に「オールフリーオールタイム」という、やはりペットボトル入りの新商品を発表(販路はコンビニ限定)。アサヒは従来から風呂上りの飲用シーンを訴求して販促し、今回はキャンプやバーベキューなどのアウトドアやゴルフなどスポーツ時での飲用シーン訴求を全面に出していくようだ。これは、同社が東京2020オリンピック・パラリンピックのゴールドスポンサーを務めていることも起因している。
対してサントリーでは、オフィスで働く人たち、特に若い層が気兼ねなく会社で飲めるよう、商品を従来のビールに似た茶褐色の色合いではなく無色透明にした。アサヒでは、「ドライゼロスパーク」の商品開発は2年前から着手したということだが、サントリーの「オールフリーオールタイム」は、清涼飲料分野でヒットしたペットボトル入りコーヒー、「クラフトBOSS」のコンセプトにある意味、似ている。
「クラフトBOSS」は従来の缶コーヒーとは違って、オフィスで働く若年層を主たるターゲットに設定し、その思惑が当たったからだ。そういう意味では、容器は同じでもアサヒとサントリーとでは、狙いがやや異なる印象だ。
前述のアサヒの黒木氏も、こう語っていた。
「(ノンアルビール市場は)ビール類の代替としての機能が一番のボリュームゾーン。ビールらしい味わいを、より強く出したのが今回の当社の商品で、そこについては多少、(サントリーとは)考え方が違うのかもしれません。
当社としては、あくまでアウトドアシーンやスポーツシーンでの飲用を一番に想定していますから。製造設備の兼ね合いで、まずは期間限定で出しますが、今夏の商戦で成果を上げて、来年には通年商品にできるように頑張りたい」
振り返るとノンアルビール商品はもともと、ビールが好きだがクルマを運転するので飲めない層に向け、ビールに似た味わいやのどごしを提供する意味合いが強かった。あるいは会食の席で、体調が悪くてアルコールを控えている、もしくは下戸だがそれでは座持ちしないというシーンにおいて、飲食店で瓶のノンアルビール商品を頼む、といった利用が多かった。
アサヒの調べによると、ノンアルビールユーザーのビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)飲用頻度は、週1回以上ビール類を飲む人が78.9%おり、週に4、5回以上飲む人も36.2%いるという。
その統計数字から、やはりノンアルビール商品は主としてビール好きな人に好んで飲まれていることがわかり、となると若年層のビール離れが叫ばれて久しい昨今だけに、主力顧客層は“おじさん世代”ということでもある。
これでは、ノンアルビール市場が将来にわたって右肩上がりで推移するとは考えにくい。ビールをよく飲むシニア世代の人でさえ、「ノンアルビールはちょっと飽きた感じがして、ほかの炭酸飲料でも別に構わない」という声も聞かれる。
そこでアサヒやサントリーでは今回、直球ばかりの商品でなく、“変化球”も交えた勝負に出てきた印象だ。