国内

作業療法士が教える「家族が心得ておくべき」認知症の知識

作業療法士を育てる文京学院大学教授の大橋幸子さん

 年をとると、体の機能が衰えたり認知症になったりして“できないこと”がどんどん増える。それを助けるのが介護だが、突然、親の介護に直面した家族はつい“できないこと”ばかりに目に行き、がっかりして悲しくて、苛立ったりもする。介護家族の気持ちは複雑で厄介だ。

 作業療法士という専門職をご存じだろうか。病気や加齢による障害をケアする医療者で、生活や人生をその人らしく営めるよう技術や工夫を駆使して助けてくれる。認知症の症状や心の状態も熟知し、介護に悩む家族にとっては力強い味方だ。

 今回はそんな作業療法士を育てる文京学院大学教授の大橋幸子さんに、家族も知っておきたい作業療法的介護の心得を聞いた。

◆生活や人生を充実させることを重視する作業療法士

 作業療法士は、理学療法士、言語聴覚士などと並ぶリハビリテーションの専門職だ。

「理学療法や言語聴覚療法が主に体の機能回復を目的とするのに対し、作業療法はその人の日常生活や人生も含めた全体像を見てケアします。たとえば脳卒中で体に麻痺が残ったり、認知症で認知機能が低下したりしたら、それらの病気の部分は包含しつつ、その人の生活や人生を充実させようとするのが作業療法です。

 単に介助するのではありません。体の麻痺や精神的な混乱があっても生活がスムーズに進むよう、ご本人の別の機能を引き出したり住まいの修繕などで環境を整えたりして、できるだけ自分でできるように工夫します」(大橋さん、以下「」内同)

 介護ビギナーの家族は、親の代わりに“やってあげる”ことが介護だと思いがちだ。確かに現実には、代行せざるを得ない場面も多いのだが、丁寧に本人を見ていくと、「あれもできない」「これもできなくなった」のすき間に「まだまだできる」ことはある。

 家族が見逃しやすい“まだできること”を探って引き出し、「自立して社会の中で生きること」につなげてくれるのが作業療法士なのだ。

◆認知症介護の第1歩は不安を取り除くこと

 意思の疎通がスムーズでなくなる認知症は、介護以前に家族としての対応も難しい。

「老年期の認知症は、記憶障害などが一般的によく知られますが、実際には脳の機能の衰え方は人それぞれ。何がわからないのか、何ができないのかは、ご本人を注意深く見ないとわかりません。

 しかも認知症の人は全般的に言葉で的確に表現することが苦手になり、また本人のプライドもあって不安や失敗を取り繕ったりするので、二重にも三重にも認知症の人への理解を阻みます。認知症に関する知識の少ないご家族には、そこが大きな難関でしょう」

 そこでまず家族が心得ておくべき認知症の知識を聞いた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
川崎春花
【トリプルボギー不倫の余波】日本女子プロ2022年覇者の川崎春花が予選落ち 不倫騒動後は調子が上向かず、今季はトップ10入り1試合のみ「マイナスばかりの関係だった」の評価も
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
「中野駅前大盆踊り大会」前夜祭でのイベント「ピンク盆踊り」がSNSを通じて拡散され問題に
《中野区長が「ピンク盆踊り」に抗議》「マジックミラー号」の前で記念撮影する…“過激”イベントの一部始終
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
『東宝シンデレラ』オーディション出身者の魅力を山田美保子さんが語ります
《第1回グランプリは沢口靖子》浜辺美波、上白石姉妹、長澤まさみ…輝き続ける『東宝シンデレラ』オーディション出身者たちは「強さも兼ね備えている」
女性セブン
9月6日から8日の3日間、新潟県に滞在された愛子さま(写真は9月11日、秋篠宮妃紀子さまにお祝いのあいさつをするため、秋篠宮邸のある赤坂御用地に入られる様子・時事通信フォト)
《ますます雅子さまに似て…》愛子さま「あえて眉山を作らずハの字に落ちる眉」「頬の高い位置にピンクのチーク」専門家が単独公務でのメイクを絶賛 気品漂う“大人の横顔”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
シーズンオフをゆったりと過ごすはずの別荘は訴訟騒動となっている(時事通信フォト)
《真美子さんとの屋外プール時間も》大谷翔平のハワイ別荘騒動で…失われ続ける愛妻との「思い出の場所」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン