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2018.06.23 07:00  週刊ポスト

【著者に訊け】山極寿一・京大総長『ゴリラからの警告』

〈信頼関係を築くため〉の、もっとも〈人間的〉であったはずの行為を、だがいま私たちは、食事時間を短縮したり、個食を増加させたりして手放しつつある。〈現代の私たちはサルの社会に似た閉鎖的な個人主義社会をつくろうとしているように見えるのだ〉。

「新聞の連載だから、みんながわかるようなものにしようと、食事や住まいのことなどを入り口にしたり、『あらしのよるに』という現代歌舞伎を題材にして、『オオカミは必ずヤギを襲う』みたいな常識と思われていることがはたして絶対なのか、と考えたり」

 人間社会の争いや、社会に蔓延する悪意や敵意、暴力についても〈解決のカギ〉を動物たちの暮らしに求めて歴史をさかのぼる。〈言葉も文明ももたない時代の人間を想像するには、人間以外の動物をヒントにする必要がある。しかし、残念ながら西洋にはその学問の伝統がない。それは日本の育ててきた霊長類学が答えを出せる領域なのである〉。

「時代の風」連載中の2014年10月に、京大総長に選出された。望んだ立場ではなかったが、「大学は窓」を目標に掲げ、インターネット上で英語による無料講義「MOOC」をするなど、さまざまな新しい取り組みを通して大学の発信力を高めてきた。学生が中心になってできた、「新しい総長グッズを作ろう!プロジェクト」のひとつである「野帳」には、扉のページに〈大学はジャングルだ〉という言葉が記されている。

「これはぼくが実際に受けた印象なんだけど、大学とジャングルはよく似てますよ。多様性と長い歴史があり、自分の専門以外は知らないこともたくさんある。野帳には、『ここにこんなものが』と発見したことを書きとめます。人間は忘れやすい動物で、だからこそ新しい知識を詰め込めるわけだけど、大事なのはその瞬間、感じたことを忘れないこと。手を動かして書くと身体化できるんです」

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