ビジネス

函館市電のTwitterはなぜ「ツイ消し」を繰り返すのか

市民の足のみならず函館観光の足としても活躍する函館市電

 SNSでの発信は記録し続けるものという考え方がある。そのため、Twitterではいったん発信したつぶやきを消すことを「ツイ消し」と呼び敬遠され、非難されることもある。ところが、観光客に愛される路面電車としてだけでなく市民の足として日々、利用されている函館市電のTwitterは、最新のつぶやきを次々と消去している。ライターの小川裕夫氏が、函館市電がなぜツイ消しを続けるのかレポートする。

 * * *
 6月18日に大阪北部を震源とする地震が発生した。通勤・通学時間帯に発災したこともあり、大阪圏の各鉄道会社では大きな混乱が生じた。

 線路や駅舎といった鉄道関連施設は大きく損壊したが、そうした様子は一般乗客が発信するツイッターをはじめとするSNSで瞬く間に全国に拡散。また、鉄道各社も公式ツイッターアカウントで、列車の運行状況などを発信。利用者の誘導や保護に努めた。

 災害時をはじめ事故・事件が発生したことにより、鉄道のダイヤが乱れるケースは珍しくない。日本の鉄道は過密なダイヤが組まれており、相互乗り入れも当たり前。そのため、1分1秒でもダイヤが乱れると、自社線は言うに及ばず他社線にも波及する。また、遅延が発生することでホームに人が溢れ、それがさらに事故を誘発することもある。

 そうした事情から、鉄道事業者は列車の運行情報を正確かつ迅速にアナウンスするツールとしてSNS、特に速報性や拡散力が強いツイッターを重宝するようになった。

 今般、JRをはじめ大手私鉄はこぞって公式ツイッターアカウントを開設。災害や事故時における運行情報のみならず沿線のイベント情報なども発信している。時折、小気味よい面白い話や沿線住民でも知らないトリビアを披歴することもある。ツイッターの中の人の個性がにじみ出るので、日頃から利用している沿線住民のみならず鉄道ファンなどが親しみを感じてフォローすることもある。

 ツイッターをマメに更新することでフォロワーを増やす鉄道会社がある一方、こうした鉄道事業者と一線を画すような運用をする鉄道事業者もある。それが、北海道函館市を走る函館市電だ。

「函館市電ツイッターでは、主に遅延や運休などの情報を投稿しています。特に冬は雪による運休も多いので利用者にいち早く伝えることを目的に2014年にツイッターを開設しました」と企業局交通部事業課で函館市電ツイッターの中の人は話す。

 函館市電のアカウント(@hakodate_koutsu)を覗くと、2018年6月19日の時点でツイート数はわずかに2。そのツイートのうちのひとつは「函館市電では,交通系ICカードがご利用いただけます。函館観光には,便利な函館市電をご利用ください」という定型句のようなツイート。これだけを見ると、函館市電のツイッターは放置されているようにも感じる。これでは、時代遅れのそしりを免れないが……。

「アカウントを開設した当初、函館市電のツイッターは過去のツイートを残していました。しかし、ツイッターは速報性や拡散力に優れている情報手段である一方で、過去の情報がRTなどで拡散してしまうこともあります。すでに遅延が解消されているにも関わらず、誤情報によって利用者が混乱することもあります。そうした混乱を招かないためにも、必要最小限の情報だけをツイートする、そして状況が変わった場合は即座にツイートを削除するという方針にしています。そのため、見た目のツイート数は少なくなっています」(同)

 函館市電の中の人が語るように、SNSの速報性や拡散力は驚異的でもあり、時に脅威的でもある。熊本地震の際には悪質なデマが飛び交い、それが頻繁にRTされて社会に混乱と不安をもたらした。災害時には、SNSの負の側面も露わになる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン