それでは腹が立ったが、やや自制して相手ではなく、その手前に水をかけたらどうかですが、これは非接触型の有形力行使が暴行になるかの問題となります。
暴行罪の成立には、有形力が身体に触れることは必要ではないと解されています。例えば、脅かす目的で相手の手前に投石する行為や嫌がらせに車の幅寄せをしたりする行為などは、不法な有形力の行使として暴行に当たります。
ただ、水の場合、危険性はなく、相手が動揺するはずがありませんから、自分の足元や真横にぶちまければ、有形力の行使には当たらないでしょう。しかし、近くを狙って撒けば、不快・嫌悪感を抱かせるので暴行になりえます。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2018年7月6日号