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黙って殺されろというのか… 酒鬼薔薇事件被害者父の叫び

社会に大きな衝撃を与えた1997年の神戸連続自動殺傷事件(写真/時事通信フォト)

 6月9日に新幹線の車両内で起きた殺傷事件。唐突に発生する無差別の犯行に対して、一般市民がいかに脆弱であるかを改めて突きつけるものだった。

 振り返れば、突然の凶行は過去に幾度となく繰り返されてきた。1997年の神戸連続児童殺傷事件、2001年の附属池田小事件、2008年の秋葉原通り魔事件、2016年の相模原障害者施設殺傷事件…。

 何の罪もない人々が犠牲になり、そのたびに悲劇を繰り返さないための提言が新聞やワイドショーを賑わす。

「地域社会全体で子供たちを見守る体制を」
「被害者と遺族に手厚いサポートを」
「前科者に偏見を持たず、社会が受け入れてサポートする体制を」

 こうした聞き心地のよい言葉の裏で、今日もどこかでまた、凶悪犯罪が繰り返されている。

「もうそろそろ、私たちは新たな一歩を進めるべきではないでしょうか」

 そう語るのは、神戸連続児童殺傷事件で酒鬼薔薇聖斗こと少年Aに襲われた堀口めぐみさん(仮名 当時10才)の父親・堀口孝史さん(仮名 58才)だ。

 1997年3月16日、友達との待ち合わせ場所に向かう途中だった小学3年生のめぐみさんは、前方から歩いてきた少年Aにすれ違いざまにナイフで腹部を刺された。

 傷は深さ8cmに達し、胃を貫いて背中の大動脈の3分の2が切断された。刃先が数mmずれていたら命は助からなかった。

 小さな体に流れる血液量の半分を輸血し、2週間後にようやく退院したが、傷口はケロイド状となり、その後も激しい痛みに襲われた。

 事件から21年。娘の地獄のような苦しみを間近で見てきた孝史さんが、昨今の凶悪事件に対する思いを口にする。

「少年Aの事件以来、“誰でもいいから殺したかった”という無差別殺人が頻繁に起きています。こうした事件が起こるたびに、被害者や親族に対し、他人事とは思えない痛みを感じます」

 事件は被害者の心身に癒されることのない傷を与える。現在は看護師として勤務するめぐみさんは2015年9月、本誌・女性セブンに自身のトラウマについてこう語っている。

「目の前から若い男性がやってくると恐怖心に襲われ、身が竦(すく)んでしまうんです。殺人シーンがあるテレビドラマも見ることができなかった。ナイフを使うシーンは、今でも見られません」

 めぐみさんは現在も凶悪事件が起きるたびに身も凍るような恐怖に襲われるという。

 警察庁の統計によれば、日本の犯罪の平均再犯率は40%超。凶悪事件が起きた後、犯人に対して「罪の意識の芽生え」や「更生」を期待する声は多いが、現実はそれほど甘くない。

 街に危険な人物が野放しにされ、凄惨な犯罪が繰り返される現状に、孝史さんは大きな無力感を抱く。

「異常者が街にいたとしても、誰もそれを見分ける方法を持っておらず、本当にどうしようもない。少しでも挙動不審な人物には気をつけようとか、そのような人物には近づかないようにしても、自ずと限界があります。周囲のすべてが加害者のように思わざるを得ません」

 理不尽な殺意に対し、一般人が為す術がない現状について、孝史さんは被害者の家族としてこう提言する。

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