国内

重大事件で犯行と犯人の病歴を結びつけるのは印象操作

田原総一朗さんが緊急提言(写真/時事通信社)

 東海道新幹線の車内で、乗客の男女3人が殺害された事件。新聞やテレビがこぞって報道したのは、小島一朗容疑者(22才)が精神的な障害を持っていたことだった。

〈新幹線殺傷…容疑者自閉症? 「旅に出る」と1月自宅出る〉

 こんな見出しで大々的に事件を報じたのは、毎日新聞のデジタル版(のちに「自閉症」という語句を削除)。

 情報番組『Mr.サンデー』(フジテレビ系)も、小島容疑者が過去に「発達障害」の診断を受けていたことを繰り返し伝えた。

 犯罪心理学に詳しい筑波大学人間系教授の原田隆之さんは、一連の報道を批判する。

「事件が発生して間もなく、まだ全貌がわかっていない段階で『容疑者は発達障害』『自閉症だった』との大きな見出しを掲げ、何度も繰り返して報道すると、病歴と犯罪に大きな関係があるという印象を受け手に与えます。もしこれが風邪や便秘など体の病気であればニュースになることはありえない」

 そもそも精神障害と犯罪を直結させるのは無理筋だ。

「厚生労働省などの公式データを用いて試算すると、一般人が犯罪に走る割合が約0.2%あるのに対し、精神障害者が犯罪に走る割合は約0.1%。つまり、健常者と比較して事件を起こしやすいとは決して言えないのです」(原田さん)

 しかし、今回に限らず、2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件を引き起こした植松聖被告が精神疾患を患っていたことが大きく報じられるなど、精神障害と事件を結びつける論調は根強い。原田さんが言う。

「得体の知れない不可解な事件が起きた時、メディアはすぐにその原因を求めます。精神障害は、その答えとしてわかりやすいのです。しかし容疑者の持つ特性の一面だけを捉えて殊更に報道するのはあまりに安易であり、こうした報道が精神障害者に対する差別や偏見を助長する恐れもあります」

 ひとたび凶悪事件が起きると、現場の様子や犯行の手口、犯人のパーソナリティーや一挙手一投足が雪崩を打つように報じられる。一連の煽情的な報道が世に潜む「犯罪予備軍」を刺激して、過去の犯罪を真似た模倣犯を生み出すとの声も多い。

 小島容疑者の犯行も、「秋葉原通り魔事件から10年」といった報道が犯行の引き金になったのではないかという批判がある。しかし、ジャーナリストの田原総一朗(84才)さんは真っ向から否定する。

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン