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目黒児童虐待死事件でも痛感したシングルマザー支援の重要性

シングルでも子育てしやすければ子どもを救えたかもしれない

 子どもの虐待事件が起きるたび、その悲惨さを嘆く声は大きくなる。ところが、虐待とは別に、子どもの環境を整える話題になると途端に無理解と無知からなのだろう、「親の自己責任だ」「税金の無駄遣いをするな」という強い声があがる。結果、虐待に対する関心の高まりにも関わらず、子育て世帯、とくにシングルマザーの苦境は変わらない。ライターの森鷹久氏が、ネットで声を上げ、連帯を始めた母親たちについてレポートする。

 * * *
 2018年3月に東京・目黒で起きた、痛ましい児童虐待死事件。保護責任者遺棄致死で逮捕されたのは、実の母親と継父だった。食事を与えない、寒空の下に薄着・裸足で放り出すなどの虐待が繰り返され、わずか五歳の女の子は、毎朝4時頃に起きてひらがなの練習をさせられていたノートに自ら「反省文」のようなものを書き残すほどまでに追い込まれていたことも、後の報道で発覚。

 女の子の悲惨な境遇は連日、報道され、世間の強い注目が集まった。社会的影響が強い事件となった背景について、事件記者からは次のような声も漏れ聞こえる。

「まず、夫が最初に逮捕されてから妻(母)が逮捕されるまで約3ヶ月と時間があり、マスコミ各社には取材する時間があったこと。被害者が可愛らしい女児だったこと。後に”反省文ノート”が出てきたこと。夫は傷害罪、保護責任者遺棄致死に加えてさらに、大麻所持で再逮捕された。虐待事件は数多ありますが、情報量や社会的に無責任な親がいるなど、条件がそろえばどうしてもセンセーショナルな報道になるし、結果的に世間の関心が強くなる。一方で“喉元過ぎれば”で、防げなかった児童虐待についての抜本的な対策は、これまで出てきていないのも事実」(大手紙事件記者)

 この事件を受け、ツイッター上には「#児童虐待に取り組まない議員を私は支持しません」というハッシュタグを用いて、相次ぐ児童虐待事件の為に、社会全体が取り組まなければならないという書き込みが相次いだ。女性芸能人、文化人らもこの動きに賛同し、声明や要望を発表している。では実際に「抜本的な対策」とは何だろうか?

 今回の事件も実母と継父という組み合わせだった。母は両親そろっていることを優先して、危うくても無理して結婚したのでは無いか。虐待を未然に防ぐには、金銭や制度などシングルマザーへの支援と、彼女たちへの偏見をなくしてゆくことがもっとも有効なのでは無いかと考える。

 神奈川県某市に住む坂田絵理子さん(仮名・40代)は、実家の稼業を受け継ぎ社長に就任した後、数年の恋愛を経て結婚し出産。しかし、子供が一歳を迎える前に旦那側の借金トラブル、異性関係などがきっかけで離婚した。

「稼業を継いでおり、離婚してからもお金の不安はありませんでした。ただ“シングル”というと世間が許さない。離婚は私の問題ではあったかもしれませんが、それが理由で生活に制限を受けたり、子供が後ろ指をさされるというのは納得がいきません」(坂田さん)

 坂田さんは、娘を某有名私立幼稚園に入学させるべく、忙しい合間を縫って知能スクールや英語教室に通わせていた。行く先々で言われたのが「片親だと○○幼稚園の面接には受からない」という、決して納得できないが、現実的なアドバイスだった。結果、第一志望の幼稚園受験には失敗し、第二志望の私立幼稚園に通わせることになったが、ママ友から言われたことや、向けられた冷酷な視線を、今も忘れることはない。

「シングルで大変ね、とか、何かあったら助け合おうと言ってくれる人はいましたが、私のいないところでは“結婚に失敗した人”とか“普通の夫婦生活”を行えなかった問題のある女と噂されていました。会社を経営する立場を皮肉られたことだってある。私が言われるだけならいい。娘は友達からも“片親”であることをイジられ、泣きじゃくっていました。

 私の責任は確かにある。父親がいたほうが良いとは思いますが、私の場合は、夫(父親)がいると破綻する環境にありました。女性が一人で自立し、十分な子育てをしたところで、こうした世間の評価というのはよほどのことがない限り覆せないのかもしれません」(坂田さん)

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