「カフの圧力は70mmHgと少し低めの設定です。拡張期血圧が、だいたい80mmHgなので、それより低めに設定することで血流が途絶えるのを防止しています。仮に絶対に漏れないよう120mmHgくらいの圧をかけると尿道が血流障害を起こしてしまい、腐ってしまう危険性があります。
尿道の内側は粘膜なので、カフで優しく寄せる感じ……と考えてください。ですから大きなくしゃみや、いきなり激しい運動をすると漏れる可能性もあります」(増田科長)
人工尿道括約筋治療器具が5年後も使用可能な確率は70%程度で、残り30%程度が故障、尿道が細くなりサイズが合わない、感染などの理由で抜去が必要となる。故障やサイズのずれは、抜去時に同時に交換できる。
問題は感染で、チューブの一部が感染すると器具全体に広がる。そのため一度器具を体外に出し、感染をしっかり治療してから、4か月後に再度入れ直す。この治療は手術後に放射線治療を実施した患者でも実施可能だ。
●取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2018年8月10日号