労働基準法上、週40時間を超える勤務は時間外労働となり、労働者には手当が発生する。また、2012年に地元の労働基準監督署に届け出された「学校法人佐藤栄学園職員給与規程」には、〈正規の勤務時間を超えて勤務することを命じられた職員には超過勤務手当を(略)支給する〉と明記されている。
だが、前述の通り、A氏の給与明細にその費目はない。つまり「残業ゼロ」となっているのだ。
◆出退勤時間は全員同じ
A氏は「内部からの情報提供があったのか、労働基準監督署の立ち入り調査を受けたことがある」とも明かす。2015年1月、年初めの職員会議で当時の校長が語った言葉を記憶しているという。
「非常に気になることがある。労基署が入った。教職員の誰かがもしかしたら訴えたのかも。かつては午前3時出勤という時代もあった。(今の教職員は)この職場での勤務をどう考えているのか」──という内容だ。
この年の1月と2月だけ、始業時間と終業時間を教員が申告するA4判1枚の「勤務時間記録表」が配られた。
「本当の出退勤時間を書いていいのかと私たちは戸惑いました。すると改めて教頭から『出勤は8時20分、退勤は午後5時とみなさん共通で記入してください。バラバラにならないように』と指示されたのです。学外の人にも勤務実態がわかってしまう入試日は〈午前7時~午後7時まで〉などと徹底しており、記入見本には0限、日直、図書館、朝鍵当番は記入しないこと、ともあった」(A氏)