マツダ車の洗練・統一された魂動デザイン
──社内では“変態”というのが最大の誉め言葉だそうですね。
前田:何回ダメ出しをしても、腐るどころか逆に奮起して努力するような部下を、私は最大級の誉め言葉として“変態”と呼んでいます。要はおかしいと思われるくらい仕事にこだわる人たちのことです。
「楽にモノを作るな、本当に丁寧に作れ」と僕はよく言うんですが、効率化一辺倒の世の中からはいいモノは生まれません。シンプルに愚直に、効率化とは逆行していく仕事をするしかないと思っています。
──叱って伸びるタイプ、誉めて伸びるタイプ両方いるわけですが、前田さんの場合はどういう指導法ですか。
前田:いい仕事をしたなと思ったら、純粋に滅茶苦茶誉めますよ。それこそ拍手もするしハグもする。逆にダメだった場合は、叱っていい人と悪い人とを区別するような面倒くさいことは考えず、さっき言ったように「これが100%の力か?」とだけ、誰に対しても分け隔てなく言いますね。そういうところは、ストイックに心を鬼にしています。
なぜなら、そこで上司が「時間が足りなかったか」などと妥協した態度を見せた途端、もうそこで終わってしまいます。仮に時間の制約がネックになっても、「オレが責任をもって時間を作るから妥協はするな」とギリギリまで頑張らせます。
──デザイナー、あるいはクレイモデラ―など専門職の社員にも、優れた技術や技能を発揮すれば部長や幹部社員に匹敵する待遇を用意するなど、前田さんは社内の人事・評価制度も変えました。専門職の人たちのモチベーションもかなり上がりますね。
前田:頑張っていい成果を出した社員は当然、いい対価を得るべきだし、いい成果がそのまま給料に反映されるという、シンプルな評価制度になりました。
結局、その社員がマツダというブランドに対してどれだけ貢献したか、そういう視点でポジションも給料も決めていくことを心掛けてやってきました。そのためにはリーダーの考え方や方向性の打ち出しで表現はいろいろあっても、軸だけはずっとぶらさないように心掛けてきました。そこが揺らいでしまうと、部下もバラバラになってしまいますからね。